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中谷潤人(25歳)は井上尚弥のように階級を上げるべき? 軽量級に詳しい英国人記者の見解は…那須川天心の“率直”な感想も「まだ後方にいる」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/09/25 11:05

中谷潤人(25歳)は井上尚弥のように階級を上げるべき? 軽量級に詳しい英国人記者の見解は…那須川天心の“率直”な感想も「まだ後方にいる」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

実力者がそろうスーパーフライ級において、グレイ氏は中谷潤人(25歳)を「ベストファイター」と評する

 ただ、現状ではまだ彼の潜在能力がどの程度かを測るのは難しいですね。井上、拳四朗、中谷、井岡に続く選手として、私はIBF世界ミニマム級暫定王者・重岡銀次朗(ワタナベ)に興味を持っています。重岡は日本でビッグネームになっていける可能性があるのでしょう。那須川が同じように成長していけるかどうか、まだはっきりとはわかりません。2戦を終えたばかりなのだから当然ですが、私の中での順序づけとしてはまだ後方に位置しているというのが正直なところです。

 もっとも、私が名前を挙げた井上、拳四朗、中谷、井岡といった王者たちは現役最高級のボクサーたち。現役内だけではなく、軽量級史上に刻まれる選手たちなのでしょう。それらの選手たちと比較され、今の那須川が見劣りするのは仕方ないところ。特にMMAをはじめとする他の格闘技からボクシングに転向した選手を評価するのは常に難しいものです。いずれ那須川が現代のエリートボクサーと同じような位置まで達したとしたら、私は躊躇わずに“間違っていた”と認めることでしょう。 

「本来なら中谷のように…」

 今後について述べておくと、那須川はまだまだ経験を積み重ねる必要があります。年齢も25歳なのだから、もちろん伸びしろは残っています。キックボクサーとして優れた実績のあるスターであり、格闘センスが高いのは間違いありません。

 そんな選手なのであれば、ボクシングのキャリアを積む過程で、ボクサーとして成功するために何が必要なのか、どんなボクサーになっていくべきかを見極めていけるのではないでしょうか。幸いにも彼が合宿を行なっているラスベガスはもちろん、現在の日本も軽量級の優れたスパーリングパートナーには事欠かないのもプラス材料です。

 ここで私が危惧しているのは、那須川はすでにビッグネームであるがゆえ、駆け足でキャリアを進めることになるのではないかということ。そういった傾向はイギリスも同じで、五輪出場などで名前が知れているボクサーは迅速なマッチメイクを余儀なくされるのです。キャリア10戦以下の選手を何とか世界ランクのトップ10に入れようと、プロモーターが尽力する姿が頻繁に見受けられます。そうなって来ると、たとえ若い選手でも、より小さな興行でじっくりと力を蓄えるのは難しくなります。

 那須川に関しても、本来であれば、プロキャリア21戦目で世界戦に辿り着いた中谷のように、十分な経験、知識を積み重ねるのが理想なのでしょう。幸いにも日本ボクシングのマッチメイキングの質は常に信頼が置けます。那須川はボクシング界で尊敬を集めるミスターホンダ(帝拳ジムの本田明彦会長)にプロモートされているのであれば尚更です。今後、那須川がボクサーとしてどこまで成長するか、そして周囲がどんな路線を歩ませるか、私も楽しみにしておきたいところです。

◇ ◇ ◇

前編」ではライトフライ級で史上初となる4団体統一王者を目指す寺地拳四朗への期待を語っている。

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「アメイジングボーイは4団体統一王者になる」寺地拳四朗、中谷潤人、那須川天心…欧米でも中継された“日本の軽量級“を英国人記者はどう見た?

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