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かつて日本一の名門サッカー公立校部員が“中学生に勉強を教える”のはナゼ?「清水東は終わった」の声を否定「プロになることだけが…」 

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間淳

間淳Jun Aida

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posted2023/09/07 11:02

かつて日本一の名門サッカー公立校部員が“中学生に勉強を教える”のはナゼ?「清水東は終わった」の声を否定「プロになることだけが…」<Number Web> photograph by Jun Aida

中学生に勉強を教える清水東高校の生徒

 他のクラブチームにはない強みを前面に押し出すため、ジュニアユースが手を組んだのが静岡市に本社を置く学習塾秀英予備校だった。秀英予備校は小学生から高校生までを対象に、静岡県内では最大手の学習塾として知られている。

 清水東ジュニアユースの選手たちは練習前に「寺子屋」で2時間ほど勉強する。土日も同じように午前中に勉強してから、昼食を取って練習に入る。選手たちが活用するのは秀英予備校の学習教材。タブレットを使って録画された授業を自分のペースで学習できる。ジュニアユースに所属する室田琥央さん(中学1年)は「勉強の習慣がつきました。秀英の教材は動画を止めたり、繰り返し確認したりできるので使いやすいです。サッカーも勉強も頑張りたいので、清水東を選びました」と語る。

中高一貫校ではありませんが地域のために

 さらに、ジュニアユースの選手たちは年間を通じて、秀英予備校が実施している統一テストを受けている。清水東高校に合格できる学力がついているのか定期的に確認できる仕組みになっている。月会費は、地元にある他クラブの相場より高いが、学習教材やテスト費用も含まれていることを考えると相応と言える。

 ジュニアユースの選手が移動中に身に着けるポロシャツとジャージーには、秀英予備校の文字が入っている。試合が中継で伝えられるプロと違い、ユニホームよりも宣伝効果が高い。ポロシャツやジャージー姿で移動する選手たちは、歩く広告塔になっている。秀英予備校から資金ではなく、学習教材のサポートを受ける対価として、ウェアに秀英予備校の文字を入れる。齋藤さんは、こう話す。

「清水東高校サッカー部はサッカーでも上位を目指し、勉強でも上位を目指す。そして、社会で活躍する人材を育成することを目的として活動しています。これを中学生にも落とし込めないかを考えました。中高一貫校ではありませんが連動できる部分はありますし、地域のためにもなると考えています」

 秀英予備校側にもメリットがある。進学校で知られる清水東へのサポートは宣伝効果が高く、企業価値も向上する。FC課の諏訪俊郎課長は「秀英に通っている小学生の保護者から清水東ジュニアユースについて聞かれる時もありますし、反響は大きいです。協賛できるのはうれしいことです。教員の多忙化で部活が地域に移行する中で、こうした特色のあるスポーツクラブが増えていけば子どもたちのためになると思っています」と語る。

高校の部員が教室に滞在するワケ

「寺子屋」での学習には、もう1つ特徴がある。

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