肩、背中、足腰を強化…カギになったフィジカル

　プロになってからの松谷は、基本的に“巧い”タイプ。空手ベースの蹴りなど器用なオールラウンダーという印象があった。

　だが「それだけでは勝てない」ことを理解できる頭のよさもあった。卜部代表の言う「技術だけで勝ってきた」状態からフィジカルを強化。パヤーフォン戦で決定的なポイントになったラッシュは、自身の課題を克服するものでもあった。

「パヤーフォン選手は同じくらいの体格でしたけど、大きい選手とクリンチで体重をかけられると凄く疲れるんです。だからK-1の闘いでは相手を押して突き放すのも重要ですね。これからは海外の選手とやっていきたいから、余計フィジカルは大事になります。フィジカルトレーニングでは特に肩のあたりと背中、足腰を鍛えました」

　つまりパンチ力と前に出る力の強化だ。

「やっぱり倒す試合、迫力のある試合がしたいですね。その中で技術も見せられたら」

パヤーフォンに勝利し、笑顔を見せた松谷　©Takao Masaki

雑誌グラビア、バラエティ出演は「K-1を広めるため」

　前王者のパヤーフォンに勝って、今の松谷はタイトル挑戦にリーチをかけた状態だ。現王者の菅原美優には昨年6月、初代王者決定トーナメント1回戦で敗れているが「今なら自信があります」と松谷。卜部代表もこう語る。

「次の試合で挑戦できたらベストなんですけど。チャンピオンが成長してるのも分かってますけど、今のペースなら次の試合で綺の成長が上回るだろうなと」

　すぐにでも挑戦したいのは、ベルトを獲ってからが勝負だと考えているからだ。

「獲るだけじゃなく、獲ってからベルトの価値を上げるのが大事なんです」（卜部）

「チャンピオンだったパヤーフォン選手に勝ったのは凄いことだと思うんですけど、勝ってみて思ったのは“もっと強くなりたい”ということ。たぶんベルトを巻いてもそう思うんじゃないかなって」（松谷）

　雑誌グラビアやフジテレビ『ジャンクSPORTS』出演で知名度も上がっている。それも「K-1を広めるため」だ。次に試合をする時までにはチャンピオンより強くなっていると、師匠も弟子も確信している。

　今は夏休み。9月いっぱいまでの2カ月は格闘技に専念できる時間で、それだけ急成長も可能だ。言ってみれば大学生ファイターの特権。「少しずつ筋肉がついてきてるんです」と言って見せてくれた二の腕も、秋にはもっと太くなっているだろう。