「うちのピッチャーから、そう点は取れないと考えていたと思うので、（慶応の）スクイズは想定していたんです。でも、4番がやってきたときは驚きましたね。どうしても1点が欲しいという表れですよね。これまでの慶応はタレント力を前面に押し出す野球をしてくるイメージがあったんですけど、そこにバントやエンドランを絡めてくるようになった。あと、実はランナーも細かい動きをしているんですよ。そういった緻密さは、発展途上な感じがしました。普段からよく練習試合をするんですけど、いつもは僕の胸を借りにくるというか、あんまり動く野球はしないんです。でも、今日は勝ちにきているな、という感じがしましたね。その気持ちに選手も引っ張られている感じがしました」

準決勝も変わらず圧巻の迫力の慶応アルプス ©Hideki Sugiyama

大会初日に森林監督から“電話”

　慶応の監督である森林貴彦の勝利への執着はこんなところにも感じられたという。小菅は笑いながら思い出す。

「森林監督は結構、図々しいところがあるんですよ。僕らの1回戦が大会初日だったので電話で『クーリングタイム、どうですか？』って、5分、10分ぐらい説明させられて。その上、うちのコーチも捕まえて、また、聞いてたんですよ。それも、ものにしてたんじゃないですか？」

慶応を率いる森林貴彦監督 ©Hideki Sugiyama

　小菅は慶応野球を冗談めかして、こう表現した。

「素材も素晴らしくて、頭もよくて、足も長くて」

　そして、この夏は、そんなチームにもっとも似合わない「イヤらしさ」が加わっていた。

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