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「カンボジア国民との間にギャップがあった」元カンボジア代表GM・本田圭佑の腹心が語った“本田体制不発”の真相 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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posted2023/08/08 17:01

「カンボジア国民との間にギャップがあった」元カンボジア代表GM・本田圭佑の腹心が語った“本田体制不発”の真相<Number Web> photograph by Getty Images

2021年のスズキカップに臨んだ本田GM。このときのカンボジアはラオスから1勝を挙げたのみで、グループリーグ敗退という結果に終わった

——日本人がたくさんいるのに一体感があるわけではなく、むしろ対立している印象すらあります。

木崎 JFAから派遣されている技術委員長の小原(一典)さんとチーム本田の協力体制、そこにスタート時点で距離があったのは事実です。

——どう感じていましたか?

木崎 そもそも本田GM就任という意思決定がカンボジアサッカー協会の会長と副会長によるトップダウンでなされたもので、技術委員長の小原さんはあとで知らされた形なんですね。

 小原さんは東南アジアにおいてライセンス制度の構築に熱心に取り組んでいる。そんな人から見たら、プロライセンスを持たない人間を実質的な監督にする協会の決定に抵抗感があるのは自然だと思います。

 さらにヘッドコーチに就任したフェリックスはアルゼンチンでプロライセンスを取得したんですが、実はアジアでは南米サッカー連盟のライセンスがそのまま通用するわけではないんです。AFCに申請して、実績などを鑑みて何級相当なのかが判断される。フェリックスは指導者の経験はなかったので、AFCからA級相当と判断されてしまいました。

 AFCはW杯予選などのAマッチにおいて、監督にはプロライセンスの保持を義務付けています。小原さんは技術委員長として、フェリックスのライセンスがAFCではA級相当でしかないことを問題視していました。

 小原さんと第1次本田体制に距離が生まれたのは、ライセンス問題が影響したと思います。ただ、誤解がないように言っておくと、小原さんはことあるごとに厳しい意見も含めてフィードバックをくれていました。スペインで指導者のプロライセンスを取った経歴からもわかるように、空気を読んで言いづらいことを言わないような方ではないので。

第2次体制での改善

 第2次本田体制では、広瀬さんのおかげで距離がかなり縮んだと思います。広瀬さんはU18代表監督の行徳さんと旧知の中で、頻繁に連絡を取り合っていました。本田GMが行徳さんにおすすめの選手を聞いていたし、行徳さんの練習に足を運んだこともありました。

——他方でJFAグループの中でも齟齬がある。

木崎 具体的には技術委員長の小原さん、U18代表監督の行徳さん、U16代表監督の井上(和徳)さんの関係ということだと思うんですが、そこは僕も三者の間に入ったことがないのでわからない部分があります。ただ、たとえばU15の国際大会があったときに育成目線で将来性を重視して起用するのか、それとも国の誇りをかけて結果を重視するのか。そういった方針で意見が分かれる部分があるのだと想像しています。

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