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「まるで鎧」撮影カメラマンの衝撃…井上尚弥の“究極の肉体”はいかに生まれた? フルトンを倒し切った筋肉の秘密「ボコッ、ボコッという感じ」 

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/07/26 11:01

「まるで鎧」撮影カメラマンの衝撃…井上尚弥の“究極の肉体”はいかに生まれた? フルトンを倒し切った筋肉の秘密「ボコッ、ボコッという感じ」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

7月25日に行われたフルトン戦に勝利し、大観衆に向けてガッツポーズを作った井上尚弥

解剖学者も驚きの「極めて洗練された筋肉」

〈名言3〉
ギザギザとした形が非常に明瞭に見えていますね。
(町田志樹・解剖学者/Number1053号 2022年6月16日発売)

◇解説◇
 モンスターの筋肉は、大学で解剖学を教える“人体のプロ”の目にも稀有なものに映るという。身長165センチ、体重約55キロの生身の人間である井上が、どうして特別なパンチを生み出せるのか? その答えの一つとも言えるのが、「ボクサーとして極めて洗練された筋肉」を備えているという点だ。町田先生が解説する。

「バランスがいいと言われますけど、すべての筋肉が等しくあるわけではないんです。ボクサーとして何でもできる、そして結果を出すための身体づくりなんでしょう。実際のボクシングの動きを繰り返すことでついてきた筋肉だと思います」

 この分析は、井上本人が語っていた「強いパンチ、安定したパンチを打とうと意識して、考えて、サンドバッグを叩き、ミットを打つことを何年も繰り返した結果、お尻とか腹斜筋とかが鍛えられたと思います」という言葉とも呼応する。肉体の強化を求めるためのトレーニングではなく、ボクシングの動きの中から最適化された筋肉が結果的に完成されたのである。

「ギザギザのボクサー筋」はまるで鎧

 町田先生が指摘する先述の「ギザギザの筋肉」とは、“ボクサー筋”とも言われる前鋸筋と外腹斜筋が組み合わさったもの。遠目に見てもボコボコと浮き出た鎧のような筋肉がこれに当たる。

「肩甲骨を前に出すのと同時に体幹を回旋させることができる。その結果、上半身と下半身が連動して、いわゆる『体重が乗ったパンチ』が打てるわけです」

 ほかにも大円筋や広背筋など、洗練された筋肉が発達・連動することで、KOを量産するパンチのエネルギーが生まれる。強敵フルトンから奪った衝撃のダウン、そしてTKO勝利。モンスターの強さの源にあるのは、人間の身体を最大限に生かした、究極の肉体なのだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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