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「大也がこんなに弱いと思いませんでした」“あの”東京五輪から2年…瀬戸大也の反骨心をよみがえらせた「ある出来事」＜世界水泳で銅メダル＞
text by
田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/07/24 17:00
400ｍ個人メドレーで銅メダルを獲得した瀬戸大也。優勝したフランスのマルシャン（中央）はフェルプス超えの世界新記録
瀬戸の成長に不可欠だった「反骨心」
彼の強さは、まやかしだったのか——。
幾度となく「自信がある」と口にしていたにもかかわらず、惨敗に終わった東京五輪。その理由は、至極単純であった。
「練習不足」。
瀬戸の強さは内面的な野性味溢れる感性に加えて、トレーニングの量と質が積み重なった上に成り立っていたものだった。その全てが不足していた東京五輪での結果は、まさに推して知るべしである。
それは、瀬戸自身も薄々気づいていたのだろう。
現在、瀬戸は東海大学で指導する加藤コーチの元で練習を行っている。加藤コーチの練習は、質も量も厳しいことで有名である。瀬戸は、その世界に自ら飛び込んだ。
最初は加藤コーチが求める要求に全く応えられなかった。加藤コーチも「（瀬戸）大也がこんなに弱いと思いませんでしたよ」と笑う。
そこで、身体から作り替えた。練習と泳ぎに差し支えない程度に脂肪を蓄え、並外れた練習量に耐えられる肉体を作った。そのうえで、毎日毎日、加藤コーチの無理難題に耐えるために、ひたすら厳しい練習に打ち込んだ。
今年4月の日本選手権前、フラッグスタッフで行った高地トレーニングでは「やりたいことの半分もできていない」と加藤コーチは瀬戸を酷評した。コンビを組んで2年目に入り、「これくらいはやれるだろう」という期待があったが、それを下回ったことに落胆を隠せなかった。
しかし、かえってそれが良かった。瀬戸の野性に火をつけたのだ。
元々反骨心の塊のような選手である。逆境に追い込まれれば追い込まれるほど、勝負どころを見極め勝利を手にしてきた。2013年のバルセロナ世界水泳選手権初勝利も、優勝候補だった萩野公介に注目が集まっていたところで陰から勝利をもぎとった。
世界水泳を連覇したときも、同大会で個人メドレーで2冠を達成したときも、持ちタイムで言えば3、4番手から前評判を覆して金メダルを勝ち取った。
さかのぼればジュニア時代は、誰もが「敵わない」と勝負を諦めて2位狙いをするほど、同い年の萩野がずば抜けて強かった。だが、その萩野に何度敗れても、届かなくても執念の炎を燃やし続け、中学2年生のときに初めて萩野に敗北を味わわせたのも瀬戸であった。
