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「(バウアーより)運動神経が悪い選手はいない?」バウアーはなぜ、サイ・ヤング賞を獲れたのか「ようやく投球のメカニズムが理解できたよ」
 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKeisuke Kamiyama

posted2023/07/07 17:00

「(バウアーより)運動神経が悪い選手はいない?」バウアーはなぜ、サイ・ヤング賞を獲れたのか「ようやく投球のメカニズムが理解できたよ」<Number Web> photograph by Keisuke Kamiyama

横浜スタジアムで取材と撮影に応じたDeNAのトレバー・バウアー投手。サイ・ヤング賞獲得にいたるまでに自らの投球術について語った

「なぜリンスカムのフォームをなぞったかというと、僕も体が大きい方じゃないから、ダイナミックな動きから同じように威力のある球を投げようとしたんだ。でも負担が大きすぎて、体のいろいろなところに痛みが出てきた。おそらくリンスカムも20代後半に同じような問題を抱え、成績が下降していったと思う。このままじゃ彼と同じ顛末になると思って、フォームの改造に乗り出したんだ」

 そこで採った解決手段は、解剖学を学ぶことだった。

「人間の骨格、筋肉がどのような構造をしているのか、一から学んだ。連動性もね。どの部位をどう動かせば無理がないのか、理解できるようになった。これは僕にとって今でも大きな財産になっているよ」

 このプロセスで意外なことが分かった。バウアーはメジャーで投げる他の投手と比べて腕の振りが遅かったのだ。これはスピードを出そうとするには不利な条件になるが、衝撃が少ない分、肩や肘への負担が少ない。日本の投手でいえば、ヤクルトの石川雅規のようなイメージだろうか。

 この段階で無理のないフォームを発見できたことで、息の長いキャリアを重ねる土台を固めた。そして一流投手へとフェイズを移行させたのは、'15年に「エッジャートロニック」というビデオカメラを入手したことだった。

「ようやく投球のメカニズムを理解できたよ」

 バウアーと彼の父は、投球をめぐる最新情報、最新技術の収集に目がなかった。その点に関しては「オタク」だった。10歳から地元で個人レッスンを受け、高校生になるとカリフォルニアからテキサスのラボに通い、高3でストレートは150kmを超えた。2010年代に入ると、バウアー父子は映像解析への興味を深めていく。

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