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「シウバの身体が小さくなっている…」カメラマンがUFCで目にした“哀しい現実”…15年続いたジャクソンとの抗争はどんな結末を迎えたのか? 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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posted2023/06/10 17:01

「シウバの身体が小さくなっている…」カメラマンがUFCで目にした“哀しい現実”…15年続いたジャクソンとの抗争はどんな結末を迎えたのか?<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2008年12月、『UFC 92』での3度目の対戦を前に激しい刺殺戦を繰り広げるヴァンダレイ・シウバとクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン

 残り時間が2分を切ったところで、ついに雌雄を決する瞬間が訪れた。シウバの右フックが、ジャクソンの顎を打ち抜く。そして冒頭に記した「残酷」な膝蹴り5連発で、ついに因縁の対決に終止符が打たれたのだった。

UFCで再戦も「シウバの身体は小さくなっていた」

 この衝撃的なエンディングを目にして、2人の物語が他団体でも引き継がれてゆくことになるとは、いったい誰が想像できただろうか。3度目の対戦は2008年12月の『UFC 92』だった。私も現地で撮影していたのでよく覚えている。

 ジャクソンは2006年にPRIDEとの契約を終了し、アメリカのWFA(ワールド・ファイティング・アライアンス)で1試合を戦った。この団体がUFCに買収されたため、彼の試合契約もUFCへと譲渡された。2007年にはUFCのライトヘビー級のベルトを巻き、2008年7月のタイトルマッチでフォレスト・グリフィンに判定負けを喫して無冠ではあったが、ファイターとして円熟期を迎えていた。

 シウバは2007年のPRIDEの活動休止後、UFCと契約。同年12月からオクタゴンで試合を再開した。UFCはユニファイドルールを採用しており、タイトルマッチ以外は基本的に5分3ラウンド制、ラウンドごとに優劣をつける採点方法だ。また、アスレティックコミッションによる厳しい体調管理も課される。加えて、彼が得意とするグラウンド状態の相手の頭部への脚による攻撃(サッカーボールキックや踏みつけ)が禁止されているため、UFCでの活躍は難しいとみられていた。

 2008年12月27日、『UFC 92』が開催された真冬のラスベガスは快晴だった。幾多ものボクシングの名勝負が行われたMGMグランド・ガーデン・アリーナは、格闘技界の殿堂ともよばれる最高の舞台だ。シウバとジャクソンという役者も揃った。だが、そんなことを考えていた私は少数派だったのだろう。この試合はメインイベントでもなければ、セミファイナルでもなかった。10試合のうちの7番目ということが、この2人の対戦への期待度や注目度の低さを物語っていた。

 シウバは前日の公式計量のときにはジャクソンを突き飛ばす威勢のいいパフォーマンスを見せた。いま振りかえると、この場面が試合以上にいちばんの見せ場だったのかもしれない。オクタゴンに上がったシウバは、PRIDE時代と比べて明らかに身体が小さくなっていた。ジャクソンとの体格差は予想以上だった。主催者はこの試合が一方的なものになることを予想していたのかもしれない。感情に流されることなく、客観的に見た場合、PRIDEで2人が見せたようなドラマチックな試合にはならない、ということを。

【次ページ】 「ひとつの時代が終わった」UFCで目にした哀しい現実

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ヴァンダレイ・シウバ
クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン
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