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多くの名選手が味わった「フジオカの壁」…47歳でついに“卒業”を決めたレジェンド・藤岡奈穂子が思い描く「女子ボクシングの未来」とは 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi/AFLO

posted2023/06/03 17:02

多くの名選手が味わった「フジオカの壁」…47歳でついに“卒業”を決めたレジェンド・藤岡奈穂子が思い描く「女子ボクシングの未来」とは<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi/AFLO

長きにわたって日本女子ボクシング界のトップランナーとして活躍した藤岡奈穂子。写真は2018年9月のイルマ・サンチェス戦

レジェンドが思いを馳せる「女子ボクシングの未来」

 女子ボクシングの現状に目を向けると、選手数はここ十数年間でほとんど変化はなく、人気が大きく向上したという実感もない。藤岡たちの奮闘にもかかわらず、裾野はなかなか広がらないのだ。

 一方で、藤岡が「競技レベルは確実に上がってきている」と言うように、ボクシングそのものの技術向上は、リングサイドから見ていても確かに感じることができる。その理由の一つがアマチュアのトップ選手のプロ転向だろう。東京オリンピックで金メダルに輝いた入江聖奈と代表の座を争った晝田瑞希(三迫)はその筆頭。昨年、WBOスーパーフライ級王座を獲得し、年間MVPに輝いた。藤岡が「日本の女子を引っ張っていける存在」と太鼓判を押す選手でもある。

 藤岡は晝田をはじめとする後輩たちに、海外進出にぜひチャレンジしてほしいと考えている。

「今、海外のレベルが上がっているので、追いついて、追い越していってほしい。自分がアメリカで2試合して、一つの道を作れたんじゃないかと思う。(海外進出を)やりたいという選手がいたらぜひお手伝いしたい」

 2022年4月、ライト級4団体統一王者のケイティー・テイラーと7階級制覇王者アマンダ・セラノがボクシングの殿堂、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで対戦し、ともに100万ドル超のファイトマネーを獲得して話題を呼んだ。日本人の選手層が厚い軽量級でここまでは難しいだろうが、「海外でやったほうがいい」というのがアメリカで2試合を戦った藤岡の実感である。

「Now or never」

 今しなければ2度とない――。去りゆくレジェンドは若い選手たちにこの言葉を残した。藤岡はつらかったとき、迷ったとき、いつもこのフレーズを思い出した。その言葉通り、チャレンジし続けた14年のプロ生活だった。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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