飛鳥　「当時はすごくいいものを食べてたでしょ？」って言われるけど、ぜんっぜんだよね。食事はホカ弁。だから、忙しいのに体重が増えちゃった（笑）。

「免許持ってんの？」「海には警察がいないから」

千種　あと、テレビ局のお弁当。あっ、覚えてる？　海を見るために（三浦半島の）油壺に行ったの。

飛鳥　油壺？　なんで？

千種　車に乗せられて到着したら、クルーザーが2艇あるわけ。「全日本女子プロレス」って書いてんの。「誰が操縦すんの？」って聞いたら、（故・松永高司）会長たちが「俺ら」って。「免許持ってんの？」って聞いたら、「海には警察がいないから免許なんていらねぇんだよ」って（笑）。

飛鳥　すげぇ会社だ（笑）。

千種　そういうものを買えるぐらい、お金があったんだと思う。

飛鳥　昔は売り興行（権利をイベント会社に売る）だったけど、うちらが売れてからは自主興行にして、それで年間最多310大会。どれだけ儲かってんのって話。

59歳ライオネス飛鳥と58歳長与千種　©︎Shunichi Oda

千種　日本武道館（'85年8月22日）のとき、売店の売り上げだけで1500万円あったって、わざわざ言いにくるのね。「ありがとなー、1500万儲かったぞ」って。自分の最初の引退、横浜アリーナでやらせてもらったんだけど（'89年5月6日）、あのときも「2億儲かったぞ。ありがとな。千種は親孝行だよ」って、会長に言われた。

飛鳥　すごい会社だなぁと思うことはたくさんあるけど、人気絶頂で引退なんて考えていないときに、退職金をくれたからね。

千種　ある関係者から、「クラッシュの経済効果は100億円くらい」って言われたことがあるけど、もしほんとうなら、何十億円の退職金をもらいたかったよ。当時はそんなことを考える余裕もなく、馬車馬のように働いてた。入団したころはさ、スッカスカの会場しか見たことがなくて……。

飛鳥　そう。会場に100人しかお客さんがいないのに、うちら新人は10人もいた。1人20冊ぐらいパンフレットを渡されて、「全部売ってこい」って（笑）。そんな時代から、日本中のどこに行っても満員になるというところまで持っていけたのは、すごいよ。

千種　どこの会場も、お客さんで客席が埋められていたから。