京セラドームで行われた強化試合の際は、ダルビッシュや大谷が練習する姿を食い入るように見つめた。大谷のトレーニングや食生活については、WBCから帰ってきた宇田川優希たちから情報収集に余念がない。

「ゆで卵をたくさん食べるという話がよく出ているじゃないですか。それでご飯を食べる、みたいな。やってみたいと思います。結構そういうの好きなので」

　ダルビッシュには、直接話を聞くことができたという。

　ダルビッシュは、山下が子供の頃から憧れていた選手だ。福岡県出身の山下は、ソフトバンクの試合を球場やテレビでよく見ていたが、家族が「あー、今日はダルビッシュが相手か」と、諦めたかのように当時の日本ハムのエースの名を口にするのをよく聞いた。

「すごく日本に影響を与えている選手なんだなと感じましたし、強く印象に残っています」

ソフトバンク戦に登板するダルビッシュ有（2010年）。小さい頃から見てきた偉大な先輩のアドバイスをたっぷり吸収した　©︎Hideki Sugiyama

　WBC後、ダルビッシュが代表メンバーに送ったタオルやバッグなどの一式が、山下のもとにも送られてきて感激した。

「自分のこと知ってもらえて、自分のところにも。嬉しかったです」

3年後「もちろんそういう選手になりたい」

　WBCではそのダルビッシュや大谷、オリックスのチームメイトも活躍したが、3年後は、山下もそこに立っている姿が想像できる。

　そう水を向けると、「3年後、行けるのはそれなりの選手だと思うので、もちろんそういう選手になりたい」と頷き、こう続けた。

「WBCを見ながら……あんな経験なかなかできないので、いいなというか、悔しいというか。上の選手が、もっとレベルが上がるじゃないですか」

　あの舞台で輝いていた“上の選手”への対抗心がのぞいた。20歳の大器が、彼らと同じ舞台に上がるのも、遠い未来のことではない。

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