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「箱根駅伝を集大成と考える選手がほとんど。しかし…」城西大監督・櫛部静二が“箱根の先”を学生に語り続ける理由「世界と戦うために」 

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加藤康博

加藤康博Yasuhiro Kato

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/04/14 11:01

「箱根駅伝を集大成と考える選手がほとんど。しかし…」城西大監督・櫛部静二が“箱根の先”を学生に語り続ける理由「世界と戦うために」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

現在は城西大監督を務める櫛部静二氏

「世界と言い続ける」指導者としての信念

 現時点で秀でた能力を発揮していなくても、卒業後に飛躍する選手はいるはずで、そうした逸材を発掘するためにも「世界」と言い続けなければならない。それが櫛部の最大の指導方針だ。言葉だけではない。自身の経験も踏まえ、世界へのアプローチの方法も作り上げてきた。

「私は30代になって初めて海外で高地合宿をしました。標高2000mを超え、ジョギングするだけで息が切れるような酸素の薄い環境で、“ここで練習していれば強くなるはずだ”と思う一方、“私たち日本人も同じような環境で練習しなければ、到底アフリカ勢には追いつけない”と感じました。

 ただ私は地元の選手はおろか、普段ならば絶対に負けない日本人の練習パートナーにも負けてしまったのです。高地環境に適応し、力をつけていくには自分自身、もう齢を取りすぎていたことを悟った時には切ない気持ちになりましたが、すでに大学で指導者としても歩み始めていたので、今後の選手たちには私のような思いをさせないように、早くから取り組むべきと考えました」

 高地環境での長期合宿は資金面だけでなく、通学しなければ単位が取れない大学生にとって現実的ではない。ならば、と高地と同様の低酸素環境を大学内に作り、そこでトレーニングを行う方向へと踏みだした。以後、この環境整備とトレーニングノウハウの確立は櫛部のライフワークとなっている。

 筆者が初めてその設備を見せてもらったのは2011年のこと。当時はまだ手作り感満載の低酸素ルームだったが、以後、少しずつ整備されていき、今はどこにも負けない充実した設備を整えるまでになった。

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