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“日本代表監督説もあった鬼才サッカー戦術家”講習がスゴい…“本田圭佑の元個人分析官”の発見「いつかビエルサジャパンを見たい」 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byAsami Enomoto

posted2023/03/25 11:06

“日本代表監督説もあった鬼才サッカー戦術家”講習がスゴい…“本田圭佑の元個人分析官”の発見「いつかビエルサジャパンを見たい」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

白石尚久さんが指導を受けたビエルサの講習会とはどんな内容だったのか(2012年撮影)

 ビエルサはまるでアメリカンフットボールかのように、ひたすら反復練習させる。「エル・ロコ」(スペイン語でクレイジーの意味)と呼ばれる所以である。

「ビエルサは講習会で『ルイス・ファンハール監督のサッカーが好きで、彼からたくさんのことを学んだ』と言っていました。VHSのビデオテープをヨーロッパから取り寄せ、ファンハールのサッカーを200試合以上見たそうです。だんだんファンハールの思考がわかってきて、自分のサッカーに取り入れたと」

パターンを何度も繰り返させ、体と頭に刷り込む

 では、どんなパターンがあるのか? 白石は4-3-3のビルドアップの練習の一例を教えてくれた。

「まずセンターバックがボールを前方に持ち出し、トップから素早く降りてきたセンターFWへ縦パスを入れます。センターFWは前に出てきた右インサイドハーフにボールを落とし、右インサイドハーフはダイレクトでアンカーに戻す。そしてアンカーは前に走り出した左インサイドハーフにパスを出す。

 縦パス→レイオフ→バックパス→再び縦パスという流れですね。戻る動きも前に出る動きもショートスプリントで行うので、フィジカルトレーニングの目的もあります。

 ビエルサはこういうパターンを何度も繰り返させ、連携を体と頭に刷り込むんです」

頭がオーバーヒート状態でしたよ。ビエルサがうまかったのは…

 次にフィニッシュの形を2つ紹介しよう。センターFW、インサイドハーフ、アンカーが絡む連携だ。

 【インサイドハーフがボールを持っているとき】
 (1)アンカーが横に短くスプリントして、インサイドハーフから斜めのバックパスを引き出す。
 (2)その瞬間、センターFWが降りてきてアンカーから斜めのパスをもらう。
 (3)同時にインサイドハーフは膨らみながら裏へスプリント。
 (4)センターFWがスルーパスを出し、インサイドハーフがシュートを打つ

 【アンカーがボールを持っているとき】
 (1)インサイドハーフがアンカーの横に降り、アンカーから横パスを引き出す。
 (2)その瞬間、センターFWが降りてきてインサイドハーフから斜めのパスをもらう。
 (3)センターFWは前に出てきたアンカーへボールを落とし、センターFWは反転して裏へ飛び出る。
 (4)アンカーがスルーパスを出し、センターFWがシュートを打つ。

 ビエルサは完璧主義者なのだろう。講習会では掻い摘むことをせず、こういう連携を1つずつ説明していったため、参加者たちは面を食らったという。

「もう頭がオーバーヒート状態でしたよ。ビエルサがうまかったのは、30分ごとに5分間休憩を入れたこと。それによって集中力を取り戻し、話を聞き続けられました。人心掌握も一流だと思いました」

 ビエルサ流はシステム論も独特だ。

【次ページ】 ぜひいつかビエルサジャパンを見てみたい

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