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「きょうはオマエが先生な」侍ジャパン山川穂高はなぜ“言語化”を求める? ロッテ4番候補・山口航輝(22歳)を変えるホームラン王の金言 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2023/03/03 11:02

「きょうはオマエが先生な」侍ジャパン山川穂高はなぜ“言語化”を求める? ロッテ4番候補・山口航輝(22歳)を変えるホームラン王の金言<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

西武・山川穂高(左)の自主トレに参加したロッテ・山口航輝。今季は「ホームラン30本」を目指す

 山川の金言は一日の至るところから飛び出してきた。グラウンドではもちろん、食事中などのプライベートな時間も。その1つ1つを聞き逃すまいと山口は懸命に耳を傾け続けた。

 一番印象的だったと語るのは「言語化が大切」という助言。最初はよくわからなかったが、徐々にその真意が分かるようになってきた。

「感覚でやるのではなく、それを言葉に変えて人に教えることが出来ないとダメ。感覚だけで“打てています”では、いざダメになった時に対応できなくなる。理論的に説明できれば、戻るべき場所に戻れる。感覚だけではなかなか戻れない。だからこそ、言語化能力は大事だよ」

 山川は優しい目でそう語ってくれたという。

「きょうはオマエが先生な」

 忘れられないことがある。練習の合間、ベンチのホワイトボードに突然、お題を書かれることがあった。自主トレには同じライオンズの西川愛也外野手や福岡ソフトバンクホークスのリチャード内野手も参加していたが、そのなかで毎日、ランダムで“司会進行役”を指名された。

「いきなり、『きょうはオマエが先生な』という感じで。テーマは色々です。『バッティングとは?』『再現性とは?』『センスとは?』『プロとは?』などなど。ホワイトボードに自分なりの考え方を書いて、それをみんなに説明するんです。『たとえ自分の中で分かっていても人に口で説明できないとダメだぞ』『話が出来るか、出来ないかで大きく変わるよ』と言われました。自分の中では分かっているつもりでも、いざ人に話をするとなると、なんて言ったらいいか分からないことは沢山あった。考えを整理して言葉にしないといけない。勉強になりました」

 これまでの山口はどちらかといえば感覚を大事にするタイプだった。ただ、山川の話を聞く中で言語化の意図がスッと腹落ちした。年間を通して結果を出す“一流”と“それ以外”の境界線に触れた気がしたのだ。

 メカニック、身体の使い方、練習方法……そのすべてを山川は理路整然と語っていた。「なぜか」「どういう効果があるのか」自分自身が持つ引き出しから惜しみなく言葉を出し、すべてをわかりやすく教えてくれた。山口からすれば、その姿は輝いて見えた。

 山口自身もより考えながら野球に取り組み始めるようになった。漠然と取り組むのと、言語化できるように理解しながら進めるのでは大きな違いがあることに気がついた。なによりもその過程で自分自身を見つめ直すことができた。

 今は、自分の技術を言葉にして説明できるかを意識し、そしてできる限り、周囲に話をしたりする。メディアの取材もその1つだと捉え、記者が理解してもらえるよう言葉を紡ぎ出すようになった。

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