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詐欺容疑でベルト返上、ぱんちゃん璃奈の“謝罪会見”に残る疑問…取材記者が覚えた“違和感”の正体「なぜ復帰会見を同時に行ったのか?」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2023/02/21 17:02

詐欺容疑でベルト返上、ぱんちゃん璃奈の“謝罪会見”に残る疑問…取材記者が覚えた“違和感”の正体「なぜ復帰会見を同時に行ったのか?」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

2月17日に会見を開き、詐欺事件の謝罪とともに格闘技復帰を表明したぱんちゃん璃奈

開き直り会見の原因は“選手寿命”と“アンチ”?

 なぜこんな「開き直り」とも取れるような会見になったのか。その理由を想像することもできる。一つは格闘家、アスリートの“寿命”だ。基本的には30歳を過ぎたら折り返し地点。ぱんちゃんは今28歳だ。選手として晩年というわけではないが、まだまだこれからと言えるほど若くもない。ケガやダメージによって「次で終わるかもしれない」という危機感も常に付きまとうのが格闘技だ。

 ぱんちゃんは昨年3月以来、試合をしていないから、事件のペナルティなしでの最短復帰でもエキシビションまででブランク1年。ファイターにとっての1年は長い。宮田氏は事件ではなくブランク全体を捉えて「これ以上、リングから遠ざけさせたくない」と考えたのだろう。

 仮に出場停止のペナルティを科すとしても、誰もが納得する期間などない。1年の出場停止でも短いと言う者は出てくるだろう。加えて、復帰後は(負傷欠場以前の力に戻っていればだが)外国人との対戦が中心になりそうだ。他競技であれば“下部リーグ降格”もあるだろうが、格闘技で“前座降格”は難しい。対戦相手のランクを下げても実力差のあるカードになるだけ。それは相手にとっても危険だ。実力に見合う試合を組むほかなく、しかし強豪外国人を招聘したらしたで“事件の影響どこ吹く風の順調なキャリア”ということになってしまう。

 ましてぱんちゃんには、以前から“アンチ”がいる。“キューティー・ストライカー”というキャッチフレーズや、アイドル的な人気は偏見も生んだ。メディアに注目され雑誌グラビアや写真集の発売も。YouTubeも含め、プロとして知名度アップは大事なことのはずなのに、目立てば目立つほど些細なことで難癖をつけられる。あまりにも酷いので、開示請求の意思表示をしたこともある。それすら「暇だなぁ」と蔑む人間がいる。

歯止めが利かなくなった、SNSでの誹謗中傷

 事件が起きてからは、もう手がつけられない。嘲笑、罵倒に歯止めが利かなくなった。おそらくそうした書き込みをしている者たちは、ぱんちゃんがどんな謝罪をしようとどれだけ厳しいペナルティを受けようと態度を変えないだろう。反省して復帰したいなら手助けする、そんな格闘家のツイートにすら批判が集まる状況だ。

 ネット世論はもう、何をどうやっても変えられない。なら、どれだけ叩かれても「受け止めます」と言って前に進むしかない。アンチを含めた、顔の見えない“世間”よりもファイター人生を大事にしたほうがいい。そういう考え方もできるのだ。

 善意が期待できるとしたら業界内の直接的なつながりや顔の見えるファンなどの“現場”だけ。悲しい、苦渋の選択としての“強行突破”カムバック。筆者はそう受け止めた。支持はしないが、強硬に否定もできない。それくらい、SNSや大手ニュースサイトのコメント欄にいる一部ユーザーはタチが悪いからだ。

 それに生きていく上での生業はどうしても必要だ。ぱんちゃんが今後も格闘技を生業にしていくことに関して、誰にも止める権利はない。たとえ格闘技を利用した悪事を働いたにしても、だ。今後、ぱんちゃんが試合をすると同様の被害が続くとでもいうなら話は別だが。

 まったく、あらゆる意味で「どうにかならなかったのか、これ」とあらためて思う。事件についても会見についても何もかも。結果としてどうにもならなかった。ぱんちゃんはリングに上がり続ける限り、事件のことを言われ続ける。罪を背負い、負い目を感じながら闘うしかない。世間一般で言う“禊”を捨てて再開する格闘技キャリア。繰り返すが支持はしない。だが否定もできない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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