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辞めたはずのラグビーでなぜ日本代表に? 早稲田の元主将が“無職”になってでも追う2つの夢「お前何考えてるんだ、って声は気にならない」 

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中矢健太

中矢健太Kenta Nakaya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/01/21 11:01

辞めたはずのラグビーでなぜ日本代表に? 早稲田の元主将が“無職”になってでも追う2つの夢「お前何考えてるんだ、って声は気にならない」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

7人制ラグビー日本代表としてワールドシリーズ(22年12月ケープタウン大会)に出場した丸尾崇真。オックスフォード大への進学を視野に入れながら、パリ五輪も目指す

 丸尾の選択肢は2つ。受かったところにいくか、もう1年勉強してオックスフォードを目指すか。後者を選んだ場合、学生という立場さえ失い、完全に無職となる。大学時代の同期は社会人2年目を迎えようとしている。

 勉強の甲斐あってテストのスコアはオックスフォードの出願条件を満たした。何のためにここまで来たのか。原点に戻った丸尾は、無職になることと引き換えに、もう1年勉強することに決めて帰国。22年6月のことだった。

 オックスフォードに入学するには、入試のスコアはもちろん、それ以上に自己推薦書や実績が合否を大きく左右する。どうやってこの1年で、オックスフォードの担当者たちをうなずかせるような強い実績を加えるか。

 考えに考え、行き着いたのは、「プロアスリートとしてラグビーをやること」だった。

 それまでの丸尾は、ただの「元・大学生ラガーマン」に過ぎなかった。そこにプロ経験が加わってから受験すると「プロアスリートからキャリアをチェンジしたい」「今後のセカンドキャリアを考えている」というように、担当者から見た志望動機が具体的になる。自分が持つ付加価値も大きくなる。

 オックスフォードに受かるために、もう一度、本気でラグビーをやる。そう決めた。

イギリスで触れた7人制ラグビーの魅力

 一方で、イギリスで参加した7人制ラグビーのイベントが心に残っていた。ラグビーのイベントとはいえ、試合後には音楽ライブがあって、パブや屋台が併設されている。ラグビー以外のスポーツも体験できるようなポップアップもある。それが夏になると各地で毎週のように開催される。日本でいうお祭りのような雰囲気で、来場者はラグビーだけを楽しむのではなく、そのカルチャーや食事を堪能しにきた人がほとんど。そうやって、ラグビーに触れる機会をつくることで、人気を維持していることを丸尾は知った。

 同時に、留学中、トレーニングを継続していたわけではないが、身体の衰えはあまり感じなかった。むしろアスリートとしての可能性を感じ、その極みに挑戦したい。そう思った。

 オリンピック。まさにアスリートの頂上決戦。もしメダルを取ったら、どんな景色が見えるのだろう――。
        
 7人制ラグビーはオリンピック競技だ。大学時代に一度、7人制代表の関係者から声がかかったことはあった。だが、早稲田での日本一しか見ていなかった丸尾は見向きもしなかった。だから、もう一度考えた。いまの自分を最大限に活かしてオリンピックに挑戦するなら、7人制ラグビーがベストな選択だろう。
        
 丸尾の中で、オックスフォードを目指すと決めたときと同じなにかが動き始めた。

【次ページ】 帰国後はどうやって練習していた?

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