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戦力外のち「ヤクルトレディさんと営業」、野球事業を起業…37歳スワローズ元ドラ1のビジネス・指導哲学「怒鳴ったりする方法論ではなく」

posted2023/01/07 11:03

 
戦力外のち「ヤクルトレディさんと営業」、野球事業を起業…37歳スワローズ元ドラ1のビジネス・指導哲学「怒鳴ったりする方法論ではなく」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

加藤幹典は野球などスポーツの関連事業でセカンドキャリアを過ごしている

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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 元ドラフト1位・自由獲得枠がプロ野球の世界を去った今。一場靖弘と加藤幹典の連続インタビューをお届けします(全4回の4回目/#1#2#3へ)

 東京ヤクルトスワローズを2012年限りで退団した加藤幹典は、当初はそのまま独立して起業するつもりだったが、夫人の勧めもあって、ヤクルト本社に入社する。

ヤクルト本社では「B2C」「B2B」を

 ヤクルト球団ではこれまでも、スワローズを引退した選手が本社の正社員になるケースがあった。ヤクルト初優勝時の強打者だった杉浦享は、引退後ヤクルト本社に入って、食品事業本部直販営業部次長になっている。加藤も同じ道に進んだ。

「ヤクルト本社に正社員として入社しました。最初はB2C(消費者向けサービス)の担当で、ヤクルトレディさんと一緒に営業に回り、研修も一緒に参加しました。

 そのあとにB2B(法人向けサービス)で、問屋さんの営業をしました。仕事は、やりながら覚えていきました。実際に現場を回ってみて、学ぶことも多かったですね」

 筆者は一般企業の広告文案作成の仕事もしている。ビジネスの世界で「B2C」「B2B」は聞きなれた言葉だが、元プロ野球選手から聞いたのは初めてだ。

「ヤクルト本社は東証一部上場企業(現プライム市場)です。取引先も一流企業が多いです。そういう組織に所属することで、ビジネスの現実や社会の流れについて知ることができたのは大きいなと思っています。タテ社会としてしっかりした組織で働いて、周りのレベルを知ることができたのは、ありがたかったですね」

 ヤクルト本社では5年勤務し、加藤は野球界に戻ってきた。そして株式会社FORMICという会社を埼玉県に設立し、2018年からスポーツ事業を展開している。ホームページには事業内容がこう記されている。

 ・スポーツ施設運営
 ・スクール運営[ZENB ACADEMY(旧HERO's ACADEMY)]
 ・スポーツイベント企画
 ・運営
 ・セミナーイベント開催 など

「具体的にはZENB ACADEMYという小中学生を対象にした野球スクールの運営がメインで、横浜、大塚、東山田などで実施しています。野球を楽しむクラスから、次のステップを目指すクラスまで元プロ選手などが少人数、マンツーマンで指導しています」

怒鳴ったりする方法論ではなく

 近年、若年層での競技人口における「野球離れ」が深刻だ。中学の軟式野球人口は10年で43%も減少した。そんな中での野球スクールだが、今後をどのように展望しているのだろうか。

「(野球人口が減少するのは)そうなるだろうなあ、とは思います。サッカー関係の人の話を聞くと、組織がしっかりしています。幼稚園でサッカー体験教室を実施して、そこからクラブチームに導くルートができている。入り口から出口までの流れがしっかりできているのに対して、野球界はみんなバラバラで動いています。ようやく公認ライセンスはできましたが、U15のライセンスはまだまだ普及していません」

 加藤は将来的に、野球スクールの事業を全国展開したいと言う。

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