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堀江翔太も驚き「力也は脚がだいぶ太くなった」帰ってきた“王者の10番”松田力也のパワーアップがスゴい「開幕から行く気満々です」
 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2022/12/16 17:00

堀江翔太も驚き「力也は脚がだいぶ太くなった」帰ってきた“王者の10番”松田力也のパワーアップがスゴい「開幕から行く気満々です」<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

左膝靭帯断裂から復帰を果たしたワイルドナイツSO松田力也(28歳)。リーグワン開幕戦のスターティングメンバーに名を連ねた

 松田がアクシデントに見舞われたのは5月7日、同じ熊谷で行われたリーグワン最終節のスピアーズ東京ベイ戦だった。

 試合開始直後、自陣で相手キックを捕り、カウンターアタックに出てステップを切ったところで松田は芝に倒れ、そのまま退場した。相手とのコンタクトではなく、いわゆる「自爆」。自分で歩いてピッチを出たこともあり、それほどの重傷には見えなかったが……症状は予想以上に重かった。左膝前十字靱帯断裂。

「膝がズレた感覚があったので、うすうすは『切れたかな』と思っていました。検査結果が出るまでは『軽いといいなあ』とほのかな期待も持っていたんですが、ダメでした。MRIに入って、真っ暗な中で検査を受けているときが一番落ち込んでいましたね」

 それから半年間、松田の名は日本ラグビーから消えた。

 リーグワン最初のプレーオフ、国立競技場でのサンゴリアスとの決勝を制しての日本一。さらには日本代表がフランス代表を追いつめ、オールブラックスからの勝利に手が届きかけた熱闘。膝さえ無事なら、松田がつけていただろう『桜の10番』は、同じワイルドナイツの山沢拓也や21歳の李承信らの背中にあった。

「代表の試合を外から見るのは勉強になりました。試合自体は、フィールドの中に立ってみないとわからないことが多いけれど、自分が入ったらこうしたい、ああしたい、という思いが湧いてきたり。出られない悔しい思いも含めて、いいものを得た時間でした」

堀江も認めた肉体の変化「強くなっています」

 そして、プレーできない時間を、松田は自分への投資に使った。つまり肉体強化。リハビリ中、一緒にトレーニングした堀江翔太の証言。

「力也は脚がだいぶ太くなりましたよね。内側広筋(ないそくこうきん=太腿内側、膝の上部)がすごくついてるし、背中もケガする前よりゴツくなった。ケガする前よりもコンタクトが強くなっています」

 松田は膝を手術して以降のリハビリにあたり、チームを離れ、堀江とともに佐藤義人スポーツトレーナーのジムに通い、全身のバランスを取りながらトレーニングに励んだ。佐藤トレーナーが目指すのは単なる筋力強化ではなく、全身のバランスを取り、試合で使えるよう筋力を最適化すること。37歳を迎える今季も進化を続ける堀江は「佐藤さんと出会ってなければ今の僕はない」と言い切るほど信頼している。

 松田はケガをした直後、佐藤トレーナーから「ワールドカップには絶対に間に合うから大丈夫。前よりも強くなって戻ろう」と声をかけられ、ポジティブな気持ちで手術に臨めたという。

「まず手術の前に、あらかじめ患部の周りを強化しました。筋肉の落ち幅を少なくするためです。手術のあとは、腿回りが50cmを切るくらい細くなったけど、ピークは60cmを越えました。今はそこから絞り込んで、57cmくらいです。ケガする前ですか? 測ってなかったので分かりません。計っておけばよかったですね。体重も、リハビリの間にいったんウエートで増やして、一時は90kgを越えたけど今は88kgくらい。前と変わりませんが、質的にはだいぶ変わりました」

【次ページ】 「力也さんがいると、いつの間にかトライが取れる」

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