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「村上宗隆選手の本塁打で度肝を抜かれたのは…」「一見矛盾してる動きが」元首位打者・鉄平も驚く“打率+威圧感アップ”のポイント 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/09/15 11:00

「村上宗隆選手の本塁打で度肝を抜かれたのは…」「一見矛盾してる動きが」元首位打者・鉄平も驚く“打率+威圧感アップ”のポイント<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

55本塁打を放ち、三冠王も視野に入る村上宗隆。打撃タイトルホルダー視点で見るすごさとは?

 これは、軸がぶれない理由とリンクしている。今シーズンの村上は、よりポイントを体に近いところに置いているという。

「昨年まではワンクッション予備の動作が入ってからスイングが始まる印象でした。予備動作の間に差し込まれたり、ポイントがずれたりしていた感じです。今は非常にスムーズ、かつ力強くバットが出ています。軸がぶれないのは体の強さだけではなく、ポイントを近くする球の引き付け方、体のコンディション、相手バッテリーの配球の読みなど、様々な要素が上手くできている証だと思います」

度肝を抜かれた「松井裕樹からの逆方向ホームラン」

 球を引き付けて打つことは、あらゆるバッターが理想としている。少しでも投球を長く目にすれば、よりヒットにできる可能性が高い球を選んでスイングできる。だが、理屈は分かっていても、実践するのは難しい。

 その理由を、鉄平氏が説明する。

「人間の本能的な部分かもしれないですが、ポイントが自分の方に近くなればなるほど不安になります。空振りするのではないか、振り遅れるのではないかという気持ちが必ず発生します」

 鉄平氏は今シーズンの村上の打席で印象に残っている場面がある。

 解説をしていた楽天とヤクルトの3回戦。村上は楽天の守護神・松井裕樹投手から15号ソロを放っている。外寄り低め、149キロの直球を左中間へ運んだ。外野手が打球を追うのをあきらめるほどの弾道と飛距離だった。鉄平氏は「度肝を抜かれました。左打者が逆方向へ飛ばす打球ではありませんでした。右のホームラン打者が引っ張った会心の当たりくらいの飛距離が出ていました」と驚く。

 この時、村上は2ストライクを取られていた。

 今シーズンの村上は55本のホームランのうち、4本に1本以上の割合となる15本を2ストライク後に放っている。打者有利なカウントではなくても結果を残せているのは、近いポイントまで球を呼び込んでいることに加えて、スイングがコンパクトであることも大きな要因である。

「村上選手は一見矛盾してるような動きができる」

 鉄平氏は言う。

「村上選手はスイング幅を十分に確保しながら、コンパクトにバットを振っています。他の打者が到底成し得ない領域にいます。経験上、高めの球をコンパクトに振って左中間やレフト線に打てないと打率は残せませんが、村上選手は逆方向に打つ技術があり、さらに遠くに飛ばす能力もあります」

 コンパクトなスイングは打球方向にも表れている。

【次ページ】 数年前の村上は“今ほどの怖さ”を感じなかったという

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