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「メイウェザーを怒らせてはいけない」世界的ボクシングカメラマンが振り返る「ブチ切れKO事件」と超努力家な“マネー”の実像 

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福田直樹

福田直樹Naoki Fukuda

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photograph byNaoki Fukuda

posted2022/07/07 11:00

「メイウェザーを怒らせてはいけない」世界的ボクシングカメラマンが振り返る「ブチ切れKO事件」と超努力家な“マネー”の実像<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

メイウェザーの試合のなかで福田直樹氏が「もっとも印象に残った」と振り返る2013年9月14日のカネロ戦。後の4団体統一王者をあらゆる局面で圧倒した

オルティスの“頭突き”にメイウェザーがキレた瞬間

 また、これは名勝負とは違うのだが、2011年9月にラスベガスで行われたビクター・オルティスとのWBC世界ウェルター級戦。「メイウェザーを怒らせてはいけない」という教訓が込められた一戦になったので、このファイトも最後に付け加えておきたい。

 同試合の4ラウンド、なかなかパンチが当たらないことに苛立ったオルティスが、ロープ側で勢い余ってメイウェザーに“頭突き”をかましてしまったのが始まり。当然、タイムがストップされ、ブーイングの中でオルティスに減点が言い渡される。

 この中断の間、メイウェザーが今まで見せたことがないような怒りの表情を浮かべ、目をぎらつかせながら、私のポジションに近いニュートラルコーナー前に歩いてきた。そのためこちらの位置からは彼の“沸騰具合”がよく分かったのだが、レフェリーとオルティスの2人は別の方向を向いてペナルティの通達をしている最中だったので、それにほとんど気づいていなかったようだ。

 案の定というか、再開後、オルティスは軽率にも仲直りのハグに出て、その場を取り繕おうとする。しかし、メイウェザーはこれに応じることなく、無防備なサウスポーに怒りの強打を浴びせ、右1発でKOしてしまった。アクションは再開されていたので合法的なパンチである。それこそメイウェザーがジムで日々磨きをかけていたような、いざという時の本気の右だったのかもしれない。

 そのオルティス戦後、KO勝ちから遠ざかったメイウェザーだが、2017年8月にUFC王者のコナー・マクレガー(アイルランド)を10回TKOに下し、TBE(The Best Ever=史上最高)の称号を保ったままボクシング公式戦を引退。以後は2018年の大晦日に行われた対那須川天心(日本)、2021年6月の対ローガン・ポール(米国)を含めて3度のエキシビションに出場している。

 年齢は現在45歳だ。既に引退しているため、本来の瞬発力や柔軟性は感じられなくなっているが、影の苦労を惜しまないメイウェザーのことなので、エキシビションといえども足をすくわれるほどの過信や手抜きはしていないのだろう。お金のことばかりを考えて一見油断しているように見えても、リングに上がるための準備は、いまでも抜かりなくしていると考えられる。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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