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ヤクルト「恐怖の1番」塩見泰隆、ウィキペディア記載“イノシシ伝説”の真相…恩師「“塩見!出たぞ~!”って。あいつも“行ってきまーす”と」 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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posted2022/07/08 11:01

ヤクルト「恐怖の1番」塩見泰隆、ウィキペディア記載“イノシシ伝説”の真相…恩師「“塩見!出たぞ~!”って。あいつも“行ってきまーす”と」<Number Web> photograph by Number Web

ヤクルト快進撃の原動力・塩見泰隆29歳。あの“イノシシ伝説”の真相を知るべく、帝京大の練習場に潜入した

イノシシ伝説の真相

 しかし――。

 イノシシ出没の気配をぷんぷんと感じながらたどり着いた急坂の上。室内練習場も備えた地下1階、地上5階建ての立派な選手寮で出迎えてくれた帝京大硬式野球部の唐澤良一監督は、そんな疑問をすっきりと吹き飛ばしてくれた。

「本当ですよ。(話を)盛ってないです。よく出るんですよ、いろんな動物が。イノシシを見つけると、あいつは子どもみたいにうわ~っ! て走っていきよった。普通イノシシは追いかけたら逃げるんですけど、キュッと止まったところで、塩見がシュッと抜き返したり。僕も当時は若かったし彼のキャラもわかっていましたから、練習の合間にイノシシを見つけると“塩見!イノシシ出たぞ~!”って。あいつも“はい! 行ってきまーす”と喜んで走って行って……」

――とはいえ、さすがにウリ坊サイズですよね?

「いやいや、色々いましたよ。でっかいイノシシの後ろに何頭かくっついて走っている時もあれば、小さいのが1匹の時もね。普通はイノシシに追いかけられると逃げるんですけど、塩見の場合は自分が追いかける方で。捕まえたろか! みたいな感じでした」

 「イノシシ伝説」は本当だった。

選手「この間、鹿は見ましたよ!」

 唐澤監督のご厚意で車に乗せていただき、選手寮からさらに徒歩20分ほど山を分け入ったところにあるその練習場へと案内してもらった。両翼90m超の球場とサブグラウンド、ブルペン、屋根付きの練習場も備えた巨大施設は、木々に囲まれ緑の香りが漂う。

「あの辺なんか、よくイノシシが走ってましたよ」

 監督が指さすのは、三塁線脇から少し小高くなった丘のあたり。

「色々出るんですよ、イノシシ、猿、キジ、狸、キツネ……最近は餌がないんですかね、この辺まで下りてくるんですよ」

 実は数年前からイノシシがグラウンドに穴を掘るなど被害が出たため、イノシシ除けの柵を作り対策。最近はすっかり姿を現さなくなっているという。帝京大は6月の首都大学リーグ入れ替え戦で明学大に敗れ、秋季リーグからは2部降格が決まった。雪辱を期し自主練習に励んでいた選手たちに聞くと「猪は見ないですけど、この間、鹿は見ましたよ!」と元気に教えてくれた。塩見先輩のようにイノシシと並走することは叶わなそうだが、大自然のなかで伸び伸びと心身を鍛え上げる伝統は受け継がれているようだ。

【次ページ】 恩師が惹かれた“ヤンチャな18歳塩見”

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