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トルシエ監督「お前はリーダーなのに、なんでW杯でプレーできないんだ!」 20年前、苦悩する森岡隆三を救った“ゴンさんの一言”

posted2022/07/07 17:01

 
トルシエ監督「お前はリーダーなのに、なんでW杯でプレーできないんだ!」 20年前、苦悩する森岡隆三を救った“ゴンさんの一言”<Number Web> photograph by JMPA

2002年の日韓W杯ベルギー戦、キャプテンマークを巻いてプレーする森岡隆三。この試合中に負傷し、以降出場は叶わなかった

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森岡隆三

森岡隆三Ryuzo Morioka

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JMPA

20年前、日本中に熱狂をもたらしたFIFAワールドカップ日韓大会。“フラット3”の中軸を担い、サッカー日本代表のキャプテンを託された男は、左足の負傷によって初戦のベルギーとの試合が唯一の出場機会となった――。6月に上梓された森岡隆三氏の著書『すべての瞬間を生きる PLAY EVERY MOMENT』(徳間書店)より、ワールドカップの舞台裏と選手たちの絆に迫る。(全3回の1回目/#2#3へ)

  6月4日、FIFAワールドカップ2002日韓大会、グループHの日本対ベルギー戦が埼玉スタジアムで行われる。

 ワールドカップ公式アンセムが流れるなか、キャプテンマークを巻き、ピッチへ向かう。

 真っ青に染まったスタジアムの光景と地響きのような歓声は、私のワールドカップの記憶として強く刻まれているシーンのひとつだ。

 この初戦まで、個人的にはメディアから入ってくる情報を意識的にコントロールし、遮断していた。

 加熱する世間の渦に必要以上に心を乱されないよう、影響を受けやすい自分なりの準備だった。その結果、良い意味でリラックスできているという実感があった。

キックオフ直後は硬さがあったベルギー戦

 試合前のロッカーでのミーティング、トルシエ監督の話や選手同士の会話を、当時のことをメンバーは覚えているだろうか。

 私は不思議と思い出せない。覚えているのは、幾度となく反復し確認してきたことを、その場でも熱く冷静に反芻していたことだ。

 いざキックオフされれば、いつものゲーム感覚が生まれると思っていた。

 ところが、これがワールドカップなのだろう。キックオフ直後は、チームも私も硬さがあったことは否めない。スローインの場面のこと。左のワイドに位置するシンジ(小野伸二)が、自陣の深いところからボールを投げようとしていた。

 私はボールを受けられると思いつつ、逆サイドに展開しようと考えた。シンジも同じように思ったからこそ、そんなメッセージのあるボールが私に飛んできた。

 すると、そこへベルギーの前線の選手がアプローチにくる。

 通常ならば、最初の立ち位置で、ある程度先手を取っていることもあり、「こちらがミスをしなければ、相手のアプローチは届かない」と冷静にボールを処理して展開できる。

 ところが、そのときは必要以上に相手のプレスにあわててしまい、サイドチェンジのパスを出せず、中途半端なクリアボールを蹴り、ピンチを招いてしまった。

 ゲーム中、自分を客観視できるかどうかは大事なことだ。

「必要以上に硬くなっているぞ」と自分の硬さを自覚できれば、「そのぶん、より良い準備、ゆとりをもち、いつもより少しサポートを深く取ろう」と対処できる。

【次ページ】 歓喜の輪に加わることができず…

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