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「もう若い年齢でもないですし」DeNA嶺井博希が明かす危機感…30歳プロ9年目のキャッチャー観を変えた“ある投手からの一言” 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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posted2022/05/23 11:00

「もう若い年齢でもないですし」DeNA嶺井博希が明かす危機感…30歳プロ9年目のキャッチャー観を変えた“ある投手からの一言”<Number Web> photograph by KYODO

DeNAの嶺井博希30歳。4日の中日戦(横浜)に3年ぶり本塁打でチームを連敗から救うなど、バッティングが好調だ

「嶺井さんは、人にはない考え方をするキャッチャーですよね。絶対にここは変化球だろうって場面で真っすぐを要求してきたり、だから投げていて面白いんですよ。投げてみようかなって思わせてくれるんです」

 入団時から意外性と強気のリードが持ち味の嶺井だが、今季は以前にはなかった変化が表れている。5月17日の中日戦(バンテリン)で完封劇を演じた今永昇太、そして20日のヤクルト戦(横浜)では調子の上がらない大貫晋一と組んで、巧みなリードでチームを勝利に導いた。顕著だったのがピッチャーが首を振ったサインであっても替えることなく押し通して投げさせる場面が少なからずあったことだ。結果的にそれは功を奏したわけだが、この変化について尋ねると嶺井は思案を巡らすようにして口を開いた。

「元々はピッチャーの気持ちを優先させる方だったんですけど、昨年、ある投手に『ピッチャーに任せ過ぎじゃないですか』と言われて、そうとらえる選手もいるんだって気づいたんです。以来、これまで以上に自分の意見を積極的に言うようになったんですけど、そこで新しい発見があって、やり取りの中で自分を押したり、引いたりできるようになったんですよね」

 提言をしてくれたピッチャーが誰だったのか嶺井は教えてくれなかったが、キャッチャーとして成長を促してくれたのは間違いないようだ。ふと思い出したのは、嶺井と同期入団の三上朋也の言葉だ。

「沖縄特有のなんくるないさ~精神と高校・大学で経験した厳しい野球観があって、マウンド上で話す少しの時間のなかで、そのときの状況を鑑み、ピッチャーに合わせたアプローチが上手くできるんです。また自分の経験からするとキャッチャーは2つのパターンに分かれます。“強気に引っ張ってリードするタイプ”と“ピッチャーに気持ちよく投げてもらうために寄り添ってくれるタイプ”。嶺井はその両方ができるんですよね」

 この言葉を嶺井に伝えると「そうなんですかねえ」と、照れたように苦笑した。

理想のキャッチャーは?「うーん、けどやっぱり目指すのは…」

 では、嶺井のなかに理想のキャッチャー像というのはあるのだろうか。そう尋ねると、眉間にシワを寄せしばし黙考した。

「うーん、まだまだ見つからないんですよね。たださっきも言いましたけど、固定観念やこれまでの自分にとらわれることなく、新しい知識や経験が増えていくことがモチベーションとなって今は野球に取り組めているんです」

 まだまだ成長したい、次に行けるんだという気概が嶺井からは感じられた。すると「あっ」という表情をしてつづけるのだ。

【次ページ】 「けどやっぱり目指すところは……」

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