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「もっと色々な選択肢があっていい」“箱根駅伝偏重”に一石を投じた林田洋翔20歳(三菱重工)が「高卒即実業団」から見据える世界の頂 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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posted2022/05/03 17:02

「もっと色々な選択肢があっていい」“箱根駅伝偏重”に一石を投じた林田洋翔20歳(三菱重工)が「高卒即実業団」から見据える世界の頂<Number Web> photograph by AFLO

2月13日、全日本実業団ハーフマラソンで優勝した三菱重工の林田洋翔。日本歴代8位タイの1時間0分38秒という好記録をマークした

「この世代のトップは譲らねえ」20歳の決意

 実業団に進んでからはケガもあり、なかなか本来の調子を出せずにいたが、ここにきて明らかな復調傾向にある。今年元日のニューイヤー駅伝では3区に抜擢され、区間新記録をマークして区間3位(区間賞を取った相澤晃とは8秒差)。2月13日に山口で行われた全日本実業団ハーフでは、1時間0分38秒の好タイムで優勝を果たした。このレースで見せた切れ味鋭いラストスパートこそ、林田の真骨頂だろう。

「じつは足が攣りかけていたんですけどね(笑)。競技場のモニターを見たら3人が並んでいて、これは行くしかないと。ラスト200mには絶対的な自信があるので、同タイムでしたけど先着できて良かったです」

 林田の世代には才能がひしめいている。同級生のなかでは、昨年の東京オリンピックに出場し、3000m障害で日本人初の7位入賞を果たした三浦龍司(順大)が筆頭格だろう。他にも、今年の箱根で1区の区間記録を作った吉居大和(中央大)や、コンスタントに好成績を残している松山和希(東洋大)らがいる。

 同世代の彼らの活躍をどう見ているのかを訊ねると、こんなストレートな答えが返ってきた。

「負けてたまるか、ですね(笑)。『この世代のトップは譲らねえ』って高校の時から言ってきたので、絶対に頂点を奪還したいと思ってます」

 今後の目標は、2024年のパリ五輪にトラックの日本代表として出場することだ。5月7日には、今夏の世界選手権の日本代表枠を懸けた日本選手権10000mが控える。そこでは中学時代に勝った田澤や、ニューイヤー駅伝で敗れた相澤らがライバルとして立ち塞がってくるだろう。

「僕はまだ持ちタイムが悪いので、一緒に走れるかは微妙ですけど、田澤さんと走ることになったらまたラスト200mまでついていって、あの恐怖をフラッシュバックさせたいですね(笑)。田澤さんって本当に人柄がよくて、人間的にはめちゃくちゃ尊敬できる方なんですけど、やっぱりレースでは負けたくないです」

『ドラゴンボール』をこよなく愛する20歳は、強力なライバルたちに挑む気持ちをこんな言葉で表現する。

「(主人公の)孫悟空って、敵が強いと『ワクワクすっぞ!』って言うじゃないですか。その気持ちがめっちゃわかります(笑)」

 そのまっすぐな向上心は今後、どのような形で実を結ぶのか。自己ベストを更新し続けた先に、でっかい夢が見えてくる――。<前編から続く>

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1学年上の田澤廉を破った“スーパー中学生”林田洋翔はなぜ箱根駅伝を目指さなかったのか?「ニューイヤーの方が面白いじゃないですか」

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