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「毎日罵られる“審判さんの仕事”はつらすぎます」 元パ首位打者・鉄平が“判定への反論”を封印した日〈佐々木朗希の件も解説〉 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph byKyodo News

posted2022/05/04 11:03

「毎日罵られる“審判さんの仕事”はつらすぎます」 元パ首位打者・鉄平が“判定への反論”を封印した日〈佐々木朗希の件も解説〉<Number Web> photograph by Kyodo News

楽天の主力を張っていた頃の鉄平。バッターボックスから至近距離にいる審判の苦悩を感じ取っていたという

「試合中、審判さんに対しては両チームのベンチから厳しい声が飛びます。お客さんからも時には罵声が浴びせられます。誰からも称賛されず、毎日罵られる仕事はつらすぎます」

少年野球の審判をやってみると判定を迷った

 現役を引退して7年。改めて審判の難しさを感じる出来事もあった。

 鉄平氏は野球をしている小学5年生の息子が所属するチームで時々、サポートとして試合の審判をすることがある。

「レベルは全然違いますが、少年野球のスピード感でもアウトとセーフの判定に迷ってしまいます。プロのスピード、緊張感の中で瞬時にアウトとセーフ、ストライクとボールをジャッジするのは大変だと思います」

 審判も人間。感情があり、個性もある。鉄平氏は現役時代、審判の判定に自らのパフォーマンスが影響されないよう心掛けた。球審の特徴を把握して打席に入る。

 ただ、球審のストライクゾーンを意識するのは、2ストライクと追い込まれてから。球審の特徴は、あくまで「補足」と考えていた。ストライクゾーンの感覚が自分と違っていても、不満を表には出さなかった。予想外の判定をされた際は、とっさにアッと声を漏らすだけだった。

「審判さんによってストライクゾーンの広さに違いは感じますし、その傾向がシーズン中に変わることもあります。人間がやっていることですから。選手はストライク、ボールの判定を変えられないので、柔軟に対応するしかないです。判定を含めて選手の責任だと思います。ストライクゾーンの判断が人によって違うのも含めて野球のおもしろみだと現役時代は思っていましたし、今も考えは同じです」

「何百試合もかけて」審判との良好な関係性を

 達観しているような鉄平氏の言葉。だが、その域に達するまでに「何百試合もかかりました」と振り返る。一軍での出場機会が増え、自分の打席を振り返ったり、他の選手の振る舞いを見たりするゆとりが生まれると、審判の判定に対して感情的になっても得はないと悟った。

「審判さんとは、なるべく良好な関係でやっていこうというコンセプトでプレーしていました。正しくジャッジしようとしている中で、個々の特徴が選手と合うか合わないかというだけです。ごちゃごちゃ言っても判定は覆りません。にらみを利かせられるのは、よほどの大御所。自分には、その力がなかったので、なるべく審判さんを味方にしようというスタイルでした」

 このスタイルに到達する前、鉄平氏は一度だけ判定への不満を露わにした試合がある。

【次ページ】 「気持ちはわかるけど、ああいう態度を取られると…」

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