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かけっこで「ビリ」だった川内優輝はなぜ日本代表になれた? 子どもの才能を潰さないための“早生まれ”への理解

posted2022/04/15 17:00

 
かけっこで「ビリ」だった川内優輝はなぜ日本代表になれた? 子どもの才能を潰さないための“早生まれ”への理解<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

2019年世界陸上ドーハ大会男子マラソンに出場した川内勇輝。18年ボストンマラソン初優勝後にプロ転向した

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鈴木威/バディスポーツ幼児園理事長

鈴木威/バディスポーツ幼児園理事長Takeshi Suzuki

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 スポーツを軸とした教育方針を掲げるバディスポーツ幼児園。今年で開園からちょうど40年を迎え、現在は姉妹園を合わせて東京・神奈川で8園を運営している。スポーツの世界で活躍するOB・OGは多く、特にサッカー界では武藤嘉紀や田中碧、籾木結花ら日本代表として活躍する選手を輩出。他にもボストンマラソンで優勝した川内優輝や松山英樹のキャディーを務める早藤将太、また女優として活躍する土屋太鳳らもバディ出身だ。
 多くの子どもたちを見てきた鈴木威理事長は、才能を伸ばす上で「早生まれ」、つまり「月齢」を理解することが重要だと語る。今年3月刊行された『スポーツでかなえる最高の教育』(鈴木威著/徳間書店)から一部を抜粋し、紹介する。

 私が月齢の差に注目するようになったのは、2007年に全国少年少女草サッカー大会でバディが優勝し、そのチームで韓国遠征に行ったことがきっかけです。

 私は全国優勝した、その年のチームにかなりの自信をもっていましたが、韓国のチームにはまったく歯が立たず、モヤモヤした気持ちを抱えて帰国しました。

 それから、私はなぜ韓国のチームがあれほどまでに強かったのかを調べることにしました。そこでわかったのが月齢の差でした。

 日本は学年が4月から始まるのに対し、韓国は9月から始まるのです。日本の子どもと比べると、半年の月齢の差が生じることになります。

 つまり、あのときの試合は、日本の学年の感覚でいえば、小学生チームが中学1年生のチームと試合をしていたようなものだったのです。

 これを機に、私はスポーツにおける月齢の影響を調べるようになりました。

 そして、興味深い結果が出たのが、2008年の全日本少年サッカー大会(現JFA全日本U−12サッカー選手権大会)に進出した48チームの月齢の差です。

全敗した沖縄チームは“4月生まれ”が0人

 大会に参加した小学6年生は合計で690人いました。そのうち4~6月生まれが247人(35.8%)、7~9月生まれが196人(28.4%)、10~12月生まれが162人(23.5%)、1~3月生まれが85人(12.3%)でした。

 これだけでも月齢差による傾向はわかりやすく出ていますが、その年に優勝した埼玉のチームのメンバー構成を見ると、ほかのチームと比べても4月生まれの割合が圧倒的に多かったのです。

 ちなみに全敗だった沖縄のチームには、4月生まれがいませんでした。

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