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《MLB労使問題の闇》メジャー初昇格の日、ベンチの端にぽつりと座って…“村八分”にされたメジャーリーガーの悲しい夜 

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木崎英夫

木崎英夫Hideo Kizaki

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posted2022/03/11 11:02

《MLB労使問題の闇》メジャー初昇格の日、ベンチの端にぽつりと座って…“村八分”にされたメジャーリーガーの悲しい夜<Number Web> photograph by KYODO

現在も続くMLB、選手組合と機構の労使対立。筆者が94〜95年のMLBストライキで見た、異常なまでの“選手の一体感”とは

 クレアGMは事態の沈静化を図るために緊急の会見を開いた。

「こうした感情が噴出することは百も承知だった。驚きはしない。でも、チームはブッシュを必要としている。彼を昇格させたのは、純粋に、戦力になってくれる経験と能力がある選手だからだ。その他に理由などない」

 記念すべきメジャー初昇格の夜、ブッシュはベンチの端にぽつりと座り戦況を見つめた。ロサンゼルス・タイムズの若手ホープで、今はUSAトゥデーの敏腕ボブ・ナイチンゲール記者は、”ostracize=村八分にする“という動詞を使いこの一件を伝えたが、地元ファンはブッシュを見棄てなかった。翌日、1番を打つバトラーの毎打席で4万人の大観衆はブーイングを浴びせた。そして、終盤に代打起用され三球三振に倒れたブッシュを歓声と万雷の拍手で包み込んだ。

 裏切り者の烙印を押された選手と野球を愛するファンのあの光景が鮮明に浮かんでくる。しかし、潤色のない小さな物語は、最後、露骨な憎しみで終わる。

 10月1日、ブッシュは宿敵パドレス戦で地区優勝を決める決勝の3ランを放った。が、レッズとの地区シリーズで登録メンバーから外された。公にされることはなかったが、ドジャースのメンバーがブッシュへのプレーオフ分配金支給に猛反発したことがその理由とされる。

現地記者が明かしたブッシュの本音

 今は亡き、デイリー・ブリーズ紙のテリー・ジョンソン記者がブッシュの本音を明かしてくれた。

「乳飲み子を抱えた若者は予期せぬ労働争議によって運命を翻弄された。給与と健康保険の支給を約束した一枚の紙を彼は大切に持っていると言った。メッツとのデビュー戦は人生最良の日だったとも言っていたよ」

 96年、ブッシュはドジャースの一員としてプレーしたが、以後、メジャーの表舞台に登場することはなかった。
 
 マイケル・アンソニー・ブッシュの名は、選手組合における後ろ向きの「対抗」の同士として、MLBの労使闘争史に刻まれたのである。 【野茂英雄編につづく】

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