ここで日本人が絶対に忘れてはいけないことがある。渡邊と八村を称える田臥こそが、日本人初のNBAプレーヤーであることだ。

2004年、フェニックス・サンズと契約し、日本人初のNBAプレーヤーとなった田臥 ©Getty Images

　能代工で高校バスケットボール界のスタープレーヤーと呼ばれた田臥は、高校卒業後にNBAを目指し、海を渡った。そこで出会ったマイナーリーグの選手たちの、「絶対に負けない」といったハングリーな姿勢は、日本人からすれば異常だった。

田臥がNBAに挑戦する過程で学んだこと

　誰もがコートで眼を血走らせている。パスがもらえなければ、相手と揉めようが自分からボールを奪いにいく。アピールできなければクビになることを知っているからだ。

　そんな競争社会で、田臥は揉まれてきた。

「彼らは幼い頃からそういう環境で育っていますから。スマートにプレーしないといけないんですけど、がむしゃらにやることも重要で。全世界からNBAを目指してアメリカに集まってきているなかで、いかに自分を表現するかっていう部分は大事です。僕もマイナーリーグ時代に学んだことでした」

　エゴイズム。

　それは、田臥がNBAに挑戦する過程で養った最大のメンタリティだった。むしろ、身につけなければ、彼らと同じ目線で戦うことすらできなかった。

　田臥には才能だけでは埋められないハンデがあった。そう、身長だ。190センチでも「低い」と言われるNBAにおいて、173センチの田臥が欧米の選手たちと並ぶと、その低さが一層、際立っていた。

　それでも彼は04年、フェニックス・サンズの選手としてコートに立った。

　NBAでの通算成績は4試合で7得点、3アシスト。平均出場時間は4分25秒。短い。だが、その足跡はあまりにも大きく、深い。そんな田臥だからこそ、「自分を表現することが大事」という言葉に重みを宿す。

「世界とどう渡り合っていくか。それは、これからの日本人の大きな挑戦だと思います」

田臥が見た「日本と世界の差」

　日本と世界の壁。それは代表チームに置き換えても顕著だ。東京五輪でも予選ラウンド全敗だったように、まだまだ世界水準とは程遠い位置にいると判断せざるを得ない。

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