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「家族がいなかったら死んでいた」IBF世界王者・尾川堅一が語る“薬物陽性”から復活した“ニューヨークの夜” 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byGetty Images

posted2022/01/23 11:01

「家族がいなかったら死んでいた」IBF世界王者・尾川堅一が語る“薬物陽性”から復活した“ニューヨークの夜”<Number Web> photograph by Getty Images

昨年11月27日、アジンガ・フジレ(南アフリカ)に3-0の判定で勝利し、IBF世界スーパーフェザー級王者となった尾川堅一

「家族がいなかったら死んでいた」

 “幻の世界チャンピオン”からやっと“幻”を吹き飛ばすことができた。

 尾川は言う。

「この4年間、思い出したくもないから覚えていないことのほうが多い。苦しい、しかないです。自分だけなら確実にボクシングをやめていたし、もっと言ったら家族がいなかったら死んでいたとも思います。

 身に覚えがないのに陽性反応が出て地獄でしたけど、今思えばこの舞台に立つための4年間でもありました。こんなに人に感謝できることもなかったと思うんです。信じてくれた人はみんな“おめでとう”じゃなくて“良かった”と言ってくれました。世界チャンピオンになって良かったもあるし、踏ん張れて良かったもあるし、ボクシングをやめないで良かったもある。妻もそうですけど、みなさんの“良かった”が凄くうれしかった。最低の4年間でしたけど、こういう経験があって最高の今になりました」

 イギリスの大手プロモーション会社マッチルームと契約を結んだことで、所属する帝拳ジムとの共同プロモートになる。アメリカやイギリスで防衛戦を行なっていく可能性も十分にある。

「自分を信じてくれた人のために、頑張ってこのベルトを獲りたかった。ただこれからは自分にとってボーナスステージ。海外に出て大きな試合をして、尾川堅一をもっとアピールしていかなきゃいけないと思っています。家族を食べさせていかなければなりませんからね」

 自宅の玄関には、IBFの赤いベルトが飾られてある。

 家族の強い絆がベルトのみならず父親のボクサーとしての誇りを取り戻した。

 地獄から生還した男は強い。いや生還させた家族はもっと強い。 <前編からつづく>

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禁止薬物の陽性反応でライセンス停止から4年…IBF世界王座を獲った尾川堅一が明かす“地獄の日々”「自分のためならとっくにやめている」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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