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「体育館裏、彫刻刀で左腕を…」マイケルや金正恩に技を披露した大道芸人が壮絶イジメ体験を中高生に伝える理由《中3で渡米、17歳でW杯》 

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キム・ミョンウ

キム・ミョンウKim Myung Wook

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photograph byCHANG-HAENG

posted2022/01/17 11:00

「体育館裏、彫刻刀で左腕を…」マイケルや金正恩に技を披露した大道芸人が壮絶イジメ体験を中高生に伝える理由《中3で渡米、17歳でW杯》<Number Web> photograph by CHANG-HAENG

中3で単身渡米し、世界を旅してきた大道芸人「ちゃんへん.」。W杯といった世界大会を勝ち抜くために、ストイックに技を磨いてきた

 壁にぶち当たっている学生もいれば、彼と同じような境遇に悩む学生もいるだろう。こうした経験談が中高生たちに響かないはずがない。2022年も学校公演のスケジュールはどんどん埋まってきているというが、これからもこのルーティンを変えるつもりはない。

「やっぱり、僕は家族の言葉にめっちゃ救われたから。オモニの『素敵な夢を持っている子はイジメなんてせえへんのや』という言葉。これは伝承していかないといけないなって思っているんです。これは僕だけじゃなくて、みんなとこの言葉を共有したいなって思っています」

 イジメによる自殺者は年々増えている。昨年10月、文科省の調査で2020年度の小中高生の自殺者数は過去最多の415人と発表された。

「僕がこうした公演を続けるのは、若者への投資みたいなところがあります。国が助けてくれないとか、生まれを問うとかは嫌なんです。貧しい家に生まれたからとか、そういうのもあるのかもしれない。でも、そこで夢を諦めたりしないでほしいんです」

 逆境(=イジメ)を乗り越えた先で、夢(=ジャグリング)と出会い、それを夢中で磨き、邁進してきた。自分の人生が彼ら彼女らの未来に少しでも役立てたら――そんな思いが、ちゃんへん.を突き動かしていたのだ。

チャンピオンという肩書きはいらない

 もちろん、“芸人”としてのスタンスも明確だ。

「色んな大会のチャンピオンっていう肩書きは過去の話。今の自分が板の上でどれだけのことができるのか勝負したい。『ちゃんへん.のショーを見たい』ってだけで呼んでもらえると思うんです。本当の意味での“芸人”として独り立ちするためには、そういう肩書きはなるべく排除していきたい」

 “王者”の肩書きは必要ない。多くの学生たちに夢を与えるパフォーマーであり続けたいという思いはこれからもきっと変わらない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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