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《異色の経歴》48歳の元マル暴刑事・関根“シュレック”秀樹がRIZINで見せたジャーマンスープレックスの意味「UWF、プロレス最強!」

posted2022/01/08 17:00

 
《異色の経歴》48歳の元マル暴刑事・関根“シュレック”秀樹がRIZINで見せたジャーマンスープレックスの意味「UWF、プロレス最強!」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

48歳にしてRIZINのリングに上がり、見事に勝利を収めた関根“シュレック”秀樹

text by

堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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RIZIN FF Susumu Nagao

 昨年大晦日にさいたまスーパーアリーナで開催された総合格闘技イベント『RIZIN.33』で、元静岡県警のマル暴刑事という異色の経歴を持つ関根“シュレック”秀樹が、シビサイ頌真にTKO勝ち。リング上で歓喜の涙を流した。

 現在、軽量級が中心となっている日本の総合格闘技界で、この日唯一のヘビー級ワンマッチ。48歳の関根は出場全選手で最年長だ。対するシビサイ頌真はRIZINで3連勝中の30歳。下馬評では、身長、リーチで大きく上回り、前回はスダリオ剛にも一本勝ちしている「シビサイ有利」との見方が大勢を占めていた。

鉄槌の連打、ついにレフェリーストップ

 実際、試合の序盤はシビサイが支配していた。関根のタックルを切り、グラウンドのトップポジションから攻撃を加え、スタンドでもヒザ蹴りを中心に攻め立てた。それでもなんとか組みつくことに成功した関根は、バックを取ると一気にジャーマンスープレックスで投げ捨て、鉄槌を落として1ラウンドを終える。

 2ラウンド、両者疲れが見える中、必死にフックを振り回しながら前に出た関根。そして組み付き引き込んで寝技に持ち込み上になると、サイドから鉄槌の連打。これをシビサイがなすすべなくもらい続け、ついにレフェリーストップ。関根が勝利への執念で上回り、逆転TKO勝利をあげた。

 試合後、和田良覚レフェリーから勝ち名乗りを受けた関根はリング上で男泣き。そしてマイクを握ると「勝って言いたかったことが三つある」と語り始め、「UWF、プロレス最強!」「大晦日、お正月も働いている警察官最強!」そして「昭和生まれ最強!」と叫んだ。

 これらはすべて自分の生き様を通じた、いわば魂のメッセージだった。

関根がジャーマンスープレックスを使った意味

 関根は、大学時代に高田延彦率いるUWFインターナショナルに憧れた大のプロレスファン。小学校から大学まで柔道に打ち込み、大学卒業後はプロレスラーになるつもりだったが、家族の猛反対を受け、警察官採用試験に合格したことで泣く泣くプロレスラーの夢を諦め、警察官となった。

 今回のシビサイ戦で入場テーマ曲に「UWFプロレスメインテーマ」を使用し、Uインター最強外国人だったゲーリー・オブライトの必殺技、ジャーマンスープレックスで投げてみせたのは、一度は諦めた夢の実現でもあったのだ。

 警察官は望んで就いた仕事ではなかったが、勤めるうちに誇りを持つようになっていった。まず機動隊に配属され、その後は刑事部捜査第四課いわゆるマル暴で長く勤めたのち、外国人組織犯罪捜査担当に異動となった。当時、関根の住む静岡県浜松市にはブラジル人が多く住んでおり、彼らの犯罪が多かったのだ。その取り締まりのため、まずはブラジル人を理解することから始めようと考えた関根は、もともと柔道家だったこともあり、ブラジル人が開いていたブラジリアン柔術の道場に通うことを思いつく。

【次ページ】 「外国人犯罪捜査」に活かすために通ったボンサイ柔術

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