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「メイウェザーが本気になった…」“大晦日の格闘技を撮り続けて20年”名物フォトグラファーが語る「リングの空気が変わった瞬間」 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2021/12/31 11:05

「メイウェザーが本気になった…」“大晦日の格闘技を撮り続けて20年”名物フォトグラファーが語る「リングの空気が変わった瞬間」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

フロイド・メイウェザー・ジュニアと那須川天心による世紀の対決が行われた2018年の大晦日。カウンターが顔をかすめたことで表情が一変したメイウェザーは、無敗の“神童”から3度のダウンを奪った

 31日の試合前、天心のセコンドであり、実父である弘幸さんと話をした。予想通り、右腕でパンチは打てないらしい。天心はサウスポーなので、利き腕の左手だけで勝負する、と。「いざとなったら、片腕はくれてやるつもりです」と笑いながら話す弘幸さんの眼から、「自ら志願したこの試合、絶対に負ける訳にはいかない」という、チームとしての強い覚悟を感じた。

 大晦日の第1試合のリングに上がった天心の右肘は、ガチガチにテーピングで固められていた。試合が始まると左のパンチやキックなど、打撃を中心に天心が優位に攻め込む。ときおりテイクダウンも決めてトップポジションをキープすると、最後はニンジャチョーク(絞め技)で一本勝ちした。寝技は逃げる練習が中心で、ニンジャチョークだって練習の流れの中で1度くらいしかやっていないはずだ。それをいきなり実戦の場で出せる天心は、やはり天才なのである。2016年の大晦日、国民的なヒーローが誕生した瞬間だった。

まさかのメイウェザー参戦にマスコミは色めき立った

 2017年の年末も、『RIZIN.8』と『RIZIN.9』の2日制だった。大会の目玉は、バンタム級トーナメント。同年の4月、アメリカ在住でUFCのトップ選手だった堀口恭司がRIZINへ参戦。堀口はトーナメントで、ぶっちぎりの強さを見せて優勝した。那須川天心はこの年のRIZINでMMAルールを2試合行い全勝。彼本来のスタイルであるキックルールでの試合を熱望し、大晦日に4人によるワンナイトトーナメントに出場すると、連続KOでキックの魅力を伝えることに成功した。

 余談だが、天心は2016年に9試合、2017年は8試合と驚異のペースで試合をしている。私が思うに、この2年間の天心は、常に「次なんかない」という覚悟で試合をしていた。毎回が“その時”だと信じて、試合を続けていた。キックボクシングの素晴らしさ、面白さを世の中に伝え、少しでもメジャーなスポーツにする機会は、いまこの瞬間しかないと……。

 そして2018年の『RIZIN.14』。ボクシングで50戦無敗、5階級王者のフロイド・メイウェザー・ジュニアが、那須川天心と対戦した。11月5日の両者同席の記者会見には、日本の5大新聞社や全ての放送局、世界中の通信社が取材に訪れた。彼らの目当ては天心ではない。「あのメイウェザーが日本で試合をする」ということに興味があるのだ。メイウェザーはそれほどに偉大なビッグネームだった。これにより対戦相手の天心の名前も、一気に世間に知られるようになった。

【次ページ】 メイウェザーを「本気」にさせたカウンター

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