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大宮アルディージャはなぜ“J2の深い沼”に引き込まれたのか? 辛くも残留を決めた霜田監督「この苦しみを絶対に忘れない」 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byMasashi Hara

posted2021/12/06 17:01

大宮アルディージャはなぜ“J2の深い沼”に引き込まれたのか? 辛くも残留を決めた霜田監督「この苦しみを絶対に忘れない」<Number Web> photograph by Masashi Hara

J2残留を決め、安堵の笑顔を浮かべる南雄太(左)ら。夏に期限付き移籍で横浜FCから加入した42歳のベテランGKは残留に大きく貢献した

 10月23日に行なわれた35節終了時点のチーム成績は、8勝13分14敗だった。霜田監督就任後では6勝8分4敗で、14位まで順位をあげている。J2残留がはっきりと見えてきたのだが、ここからジュビロ磐田、京都サンガ、そして残留を争うレノファ山口を相手に3連敗。磐田戦は90+7分、京都戦は90+6分、山口戦は85分の失点で勝ち点を逃した。

技術はあれど「勝負の経験値」を持つ選手は少なかった

 J1でしぶとく残留をつかみ取ってきた歴史があり、予算規模も小さくないこともあって、大宮は「クオリティの高い選手が揃っている」と言われる。J2で対戦する監督は、ほぼ漏れなく「個のレベルの高さ」を指摘したものだ。

 しかし、「経験値」はどうか。J1で実績を積み重ねてきた選手は少数派だ。最終節・群馬戦のスタメンから経験豊富な選手を探すと、シーズン途中に加入したGK南雄太とキャプテンの三門雄大のふたりになるだろうか。石川俊輝と菊地俊介は湘南ベルマーレでキャリアを築いたが、J1よりJ2の出場試合数が多い。

 しっかりとした技術を持った選手、将来性豊かな選手が揃っている一方で、現在の大宮にはギリギリの勝負を知る選手が多くない、と言うことができる。J1に踏み止まっていた当時との、明らかな違いがそこにある。J2に降格してからの4シーズンは、勝負強さを感じさせることができていないのだ。

 得点源を固定できなかったことも、今シーズンの苦しみにつながっていた。20年から在籍するセルビアリーグ得点王の実績を持つネルミン・ハスキッチは、2シーズンで合計5得点しかあげられなかった。20年途中に横浜FCから獲得したイバも、J2得点王となった往時のプレーは見せられなかった。J1昇格の磐田が得点王のルキアンを、京都が得点ランク2位のピーター・ウタカを擁していたのとは対照的だ。

 フロントも手をこまねいていたわけではない。GK南とともに夏に補強した河田篤秀が、19試合に出場して7ゴールを記録した。群馬との最終節でも、勝利を決定づける3点目をゲットした。徳島ヴォルティスでJ1昇格を知る29歳は、J2残留の立役者と言っていい。

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