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鈴木誠也の大リーグ挑戦は「いいタイミングではない」が…MLB経営者側と選手組合の衝突激化で〈大谷翔平の年俸問題〉にも影響? 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2021/11/16 17:05

鈴木誠也の大リーグ挑戦は「いいタイミングではない」が…MLB経営者側と選手組合の衝突激化で〈大谷翔平の年俸問題〉にも影響?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

ポスティングでのメジャーリーグ挑戦を表明した広島の鈴木誠也。

MLB全体の年俸総額へも影響

 29歳半でのFA権取得は、20代前半でデビューした選手たちにとってはマイナス、20代半ばから後半にデビューした選手たちにとってはプラスと、選手組合にとっては一長一短がある。

 年俸調停権の代わりにセイバー系の数値を取り入れた算出法などで年俸額を設定する提案も、2018年のクリス・ブライアント選手(前ジャイアンツ)、2020年のコディー・ベリンジャー(ドジャース)のようにリーグMVP級の活躍をする選手にとってはマイナスに思えるが、打者なら打点、投手なら勝利数といった伝統的でチームメイトの力によって数字が変わる成績から脱却して、より正確に選手の査定ができると見られている。

 その結果、たとえばWARの数値が高い大谷翔平選手(エンゼルス)の今年の年俸300万ドル(約3億3000万円)も、来年の550万ドル(約6億500万円)も「成績に見合わない年俸」になり、(複数年契約していなければ)彼の活躍に応じた年俸に見直される可能性がある。

「贅沢税」の変化も

 経営者側は選手の待遇だけではなく、MLB全体の選手の年俸総額にもメスを入れようとしている。

 既報によると、経営者側は選手組合に対し、すでに現行の労使協定で2億1000万ドル(1ドル110円換算なら約231億円。以下同様)に設定されている贅沢税の課税上限額を、一気に1億8000万ドル(約198億円)まで下げる提案をしたそうだ。

 贅沢税は、選手の年俸総額の上限を越えた球団のみが課税されるので、事実上の「サラリーキャップ」と言ってもいいだろう。

 今年の年俸総額なら、同1位のヤンキース(約2億2719万ドル)と同2位のパドレス(約2億1326万ドル)だけが贅沢税の課税対象となるところを、同3位のメッツ(約1億8474万ドル)、同4位のホワイトソックス(約1億8404万ドル)、同5位のレッドソックス(約1億8325万ドル)までの5球団が課税対象となる。

 伝統的に贅沢税を覚悟しながら補強しているヤンキースみたいな球団が、上限額が低くなることで補強を控えるとは思えないが、一つの仮定として、単純にヤンキースを含む5球団が上限額を忠実に守って課税を回避すれば、計約9248万ドル(約10億1728万円)が選手たちの懐から消えていくことになる。

 そんな提案に選手組合が合意するわけはないので、今は何も設定されていない選手の年俸総額に1億ドル(約110億円)の下限を設けるのはどうか? というのが提案の肝である。

 今年の年俸総額なら、選手の年俸総額11位のカブス(約9780万ドル)から同30位のパイレーツ(約6092万ドル)までの20球団が対象となり、それらの球団が提案に則って、選手の年俸総額を上昇させれば合計約2億1322万ドル(約234億5,420万円)もの大金が、選手たちの懐に転がり込むことになる。

【次ページ】 有力球団が年俸総額を抑制する可能性も

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