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年俸総額はインテルの3分の1以下…強豪へと成長した“青春のチーム”アタランタが抱える見えない爆弾とは? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/11/14 11:01

年俸総額はインテルの3分の1以下…強豪へと成長した“青春のチーム”アタランタが抱える見えない爆弾とは?<Number Web> photograph by Getty Images

3季連続でCL出場を果たすなどセリエAで存在感を放つアタランタ。その躍進の陰には様々な火種もくすぶっている

再浮上してきた荒っぽいゴール裏問題

 アタランタには、ここ数年鳴りを潜めてきた荒っぽいゴール裏問題も再浮上してきた。

 先月末に行われた第11節ラツィオ戦、後半アディショナルタイムに遅延行為をした相手GKレイナの頭部へコインが投げつけられる事件が発生した。他にも、使い捨てライターや引き剥がされたシートがグラウンドに投げ入れられた。かつて、狂信と暴力で名を売ったアタランタのゴール裏は、決してクリーンとはいえない。

 それでも、FWサパタは「このチームに愛着がある」と夏の移籍を断った。加入5年目、すっかり重鎮のMFデローンの言葉には、まだ清々しい青春の響きがある。

「このチームにお山の大将はいない。全員で話し合い、全員で笑い合う。一人ひとり、皆が責任を負うキャプテンなんだ」

 11月3日、アタランタはCLグループリーグ第4節、本拠地ベルガモでマンチェスター・ユナイテッドを迎え撃った。

 欧州中が注目した大一番は、白熱の好ゲームとなった。

 2-1でリードして迎えた後半アディショナルタイム、C・ロナウドに土壇場での同点弾を決められて金星はあげられなかったものの、人口12万人の小さな町に沸いた興奮はその夜、なかなか収まらなかった。

“青春のチーム”から“大人のチーム”へ

 試合後、経営規模で遥かに上のプレミアリーグの名門と互角に渡り合ったガスペリーニの表情は晴れやかだった。

「悔しさを1から100で表すと? 1000だよ、1000(笑)! 正直今夜は勝てると信じていたからね。ゲームをコントロールしていたし、あと少しだった。だが、これがチャンピオンズだよ。我々はマンチェスター・Uと渡り合ったこの2試合について胸を張るべきだ。素晴らしい夜だ」

 中東の王族や米国ファンド買収によるマネーゲームが跋扈する近年の欧州サッカー界にあって、自分たちの力だけでのし上がったアタランタの活躍は、眩しい輝きを放つ。

 恐れを知らず、自分たちの信じる攻撃サッカーで果敢に国内外のビッグクラブに挑んでいくアタランタは、青春の瑞々しい力溢れる、素晴らしいチームだ。

 だが、青春にはいつか終わりがくる。

 今後、ガスペリーニ監督とペルカッシ会長には、選手の士気維持と慎重なチーム運営が求められるだろう。

 ひたすら走るだけでよかった“青春のチーム”から、勝負で一定の結果を出し続ける“大人のチーム”へ。

 この冬、端境期を迎えようとするアタランタの戦いぶりに目を凝らしたい。

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