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「箱根で“花の2区”を走る必要はない」五輪7位の最注目ランナー・三浦龍司(順大2年)へ、東京五輪陸上コーチが緊急提言 

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岩水嘉孝

岩水嘉孝Yoshitaka Iwamizu

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photograph byJMPA

posted2021/11/06 17:01

「箱根で“花の2区”を走る必要はない」五輪7位の最注目ランナー・三浦龍司(順大2年)へ、東京五輪陸上コーチが緊急提言<Number Web> photograph by JMPA

2020年の全日本駅伝で1区を走る順天堂大の三浦龍司

“花の2区”を走る必要はない

 大切なのは軸足をどこに置くかです。本人や長門俊介監督が考えている通り、3000m障害に軸足を置き、距離を走り込むにしてもあくまで3000m障害のベースを作るためといった意識を持って欲しいです。特に冬の間は3000m障害のレースはありませんので、その技術を深く求めないでいいですし、スピードを伸ばすようなトレーニングを詰め込む必要もありません。あまり負荷をかけずに、のびのびと長い距離を走ることが来年度のトラックシーズンにつながると思います。順天堂大学の中にはクロスカントリーコースもありますので、そうしたところを積極的に使えば、海外の選手と同様のトレーニングも可能になります。

 そうした練習でも、彼は箱根駅伝で素晴らしい走りができるのではないでしょうか。ハーフマラソンでU20日本最高記録を出している通り、長い距離への適性も高いですし、アスリートとして見た時、あまり練習を詰め込まずとも、きっかけさえ与えればポーンとこちらの想像以上の走りをしてしまう選手です。こうしたタイプの選手には目標を周りが与えてプレッシャーをかけるのではなく、本人の意思や感覚を重視した方がいいと私は思います。長門俊介監督も三浦選手にはあまり多くを求めないスタンスを取っているように見受けられます。

 三浦選手は前回の箱根駅伝では1区を走りました。今大会も起伏の少ない1区や3区などでの起用が濃厚と伝えられています。私は1、2年生で1区、3年生で2区を走りました。4年生は大会直前に肺気胸を患い出場できませんでしたが、それまで2区を走る準備をしていました。よく知られている通り、各校のエースがしのぎを削る、いわゆる“花の2区”は中盤とラスト3kmに厳しい上り坂のある難易度の高いコースです。3000m障害に向けたトレーニングではクロスカントリーなど起伏のある場所を走ってのトレーニングは有効ですが、20kmを走る中での上りという意味だと、そこにつながりを見つけるのは難しいと思います。2区を走るためには2区のための練習が必要ですし、それは三浦選手が3000m障害を目指すうえではあまり必要ないのではないかと私は思います。

三浦選手の“伸びしろ”は…

 3000m障害の選手として冬の間に走り込み以外にも取り組んでほしいトレーニングがあります。それは脚筋力を高めるための筋力トレーニングや瞬発力を高めるプライオメトリクストレーニングなどです。3000m障害はレース中、大障害や水濠などを飛び越えていく必要がありますので、ただ走り込むだけの強化では足りません。三浦選手は障害を越える技術が非常に高く、着地も身体の重心の真下で接地し、一歩目から加速できる技術を持っています。そのため障害を越える際のスピードロスが少ないのです。すでに高いレベルにいますが、この点をさらに磨いていければ大きな武器になるはずです。

【次ページ】 箱根駅伝は間違いなく彼を中心に動くでしょう

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