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「ONE TEAM」が流行語大賞から2年…ラグビーは“国民的スポーツ”に近づいたのか?〈新リーグもついに発表〉 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2021/10/22 06:01

「ONE TEAM」が流行語大賞から2年…ラグビーは“国民的スポーツ”に近づいたのか?〈新リーグもついに発表〉<Number Web> photograph by Getty Images

日本がラグビーに沸いた2019年のW杯から3年。ラグビー人気の今をレポートする

 新型コロナウイルス感染症によって、トップリーグはシーズン途中で中止に追い込まれた。追い込まれて、しまった。ラグビー人気を定着させられる黄金の好機が、強制的にシャットダウンされてしまったのである。

 最後のトップリーグとなった2021年シーズンも、コロナ禍の中での開催となった。現役ニュージーランド代表にして世界最優秀選手に輝いたこともあるボーデン・バレット、19年W杯優勝の南アフリカ代表マカゾレ・マピンピらのビッグネームがやってきた。Jリーグではアンドレス・イニエスタがファンを沸かせているが、バレットはラグビー界のリオネル・メッシのような存在だ。いままさに世界のトップ・オブ・トップに君臨する選手が、日本でプレーしていたのである。

 だが、世界最高峰のスキルがピッチ上の攻防を白熱化させた一方で、観客数はコロナ禍の制限内に押し止められることとなった。ラグビー人気再沸騰への起爆剤は発火せず、19年の残照は記憶の彼方へ過ぎ去ってしまった。

 日本にはプロスポーツとして野球があり、サッカーJリーグがあり、バスケットボールのBリーグがある。開幕から6シーズン目を過ごしているBリーグは、リーグとクラブの事業規模を大きく成長させ、日本人の1億円プレーヤーも誕生した。日本代表の国際競技力を、Bリーグが押し上げる効果も表れている。

 さて、ラグビーはどうだろうか。

ラグビーの「プロ化」は成功したのか?

 スポーツのレベルアップや持続的発展の手段として、プロ化は唯一の最適解ではない。プロ化は選手にもファンにも夢を与え、可視化できる夢としてサラリーがあげられる。ところが、選手人件費が膨らむと経営を圧迫するばかりか、様々な事業への投資が先送りされてしまう。チームを存続させることに精いっぱいの状況だ。これでは、持続的な発展などおぼつかない。

 リーグワンはディビジョン1が12チーム、ディビジョン2と3が6チームで構成され、入れ替え戦が行われる。「下に落ちたくない」とか「上に上がりたい」というモチベーションは、個々のチームの競技力とリーグ全体のクオリティの向上につながる。

 ファン目線では面白い。どちらが勝つのだろうとの興味を、当事者でなくても抱くことができる。

 ビジネス的な視点では悩ましい。下部リーグへの降格は、スポンサーの撤退や減額などにつながる。降格を避けるために、新たに選手を補強する。人件費が膨らみ、経営が圧迫されてしまう。

 リーグワンは完全なプロ化を目ざしていない。入れ替え戦はあるものの、それによって各チームの経営が苦しくなるようなことはないだろう。母体企業がパートナーとして協力していく構図は、コロナ禍の中でのスタートを考えても現実的だ。

【次ページ】 “私たちのチーム”という意識を作り上げる

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