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<全米OP>史上9度目22年ぶりの“10代対決”も「世界ランク70位以下」…なぜ女子の若手選手は活躍しづらくなったのか?

posted2021/09/14 11:03

 
<全米OP>史上9度目22年ぶりの“10代対決”も「世界ランク70位以下」…なぜ女子の若手選手は活躍しづらくなったのか?<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

22年ぶりの10代決勝で勝利し、全米OPを制したのは18歳のエマ・ラドゥカヌ(イギリス)だった

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Hiromasa Mano

 グランドスラムの決勝で22年ぶりとなる10代対決。大会前はほとんど無名だった若い二人のテニスをファンは心から楽しみ、どちらを贔屓するわけでもなくコート全体を包み込むように盛り上げていた。

 これが、3年前のあの日と同じニューヨークのテニスファンだろうか。2018年の全米オープン決勝、史上最多24回目のグランドスラム優勝という偉大な記録がかかっていたセリーナ・ウィリアムズを大坂なおみが破り、グランドスラム初優勝を遂げた日、スタジアムは殺気立っていた。試合中も、そして表彰式になってもブーイングをやめず、20歳の新チャンピオンを祝うムードなどどこにもなかった。

 あのときのように、アメリカのファンを熱狂的にし、ときに獰猛化させる絶対的女王のセリーナは、今大会をケガで欠場。そのセリーナの後を継ぐスターとなった大坂は、やはりメンタルの問題を抱えつつファンの心をざわつかせながら3回戦で敗れた。

決勝戦のコートに立ったのは、18歳と19歳だった

 目玉を失った大会。ふと見渡せば、いつの時代も女王の脇に一人や二人いたはずの天才少女や“妖精”はいない。女子テニス本来の魅力を忘れかけているところへ突如現れたアイドルが、決勝戦のコートに立つ18歳と19歳だった。

 漲るチャレンジャー魂、体は大きくないが打ち負けないフィジカルとテクニック、プレッシャーがかかればかかるほどたくましくなるメンタル。コート上のマナーもよく、笑顔や仕草がチャーミングなふたりはたちまちニューヨークの人気者になり、その快進撃にスタジアムは沸いた。

ミラクルガールは「まるで魔法にかかったみたい」

 ひとりは、大坂を3回戦で破った世界ランク73位のレイラ・フェルナンデス(カナダ)。2日後、やはりグランドスラムで複数回優勝を誇る元女王アンジェリック・ケルバーを撃破すると、19歳の誕生日をはさんで準々決勝では第5シードのエリナ・スビトリーナ、準決勝では第2シードのアーニャ・サバレンカと、錚々たるビッグネームを全てタイブレーク絡みのフルセットで次々と倒してきた。多くの選手が何年もかけて経験することをたった1週間ほどで経験したミラクルガールは、「まるで魔法にかかったみたい」と目を丸くした。

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