オリンピックPRESSBACK NUMBER

「先輩にもここにいてほしかった…」見延和靖(34)が明かす、絶対に“エペ団体で金メダル”を獲りたかったもう1つの理由

posted2021/09/09 11:01

 
「先輩にもここにいてほしかった…」見延和靖(34)が明かす、絶対に“エペ団体で金メダル”を獲りたかったもう1つの理由<Number Web> photograph by Getty Images

金メダルという大きな目標を達成した見延和靖(34歳)

text by

田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

PROFILE

photograph by

Getty Images

 日本フェンシング界、悲願の金メダル。しかも、勝ったのは世界で最も競技人口の多い男子エペ。ほんの数年前まで「不可能」と思われていた快挙を団体戦で成し遂げた。

「個人戦よりも団体で勝ちたい」と、見延和靖(34歳)はチームでの勝利にこだわってきた。

 世界で見ればエペはフェンシングの花形種目だが、かつては日本での競技人口が少なく、代表の団体戦をマッチメイクするのもやっと、という時代があった。しかし、ジュニア層の育成にも注力するオレクサンドル・ゴルバチュク日本代表エペコーチは、世界ジュニアを制した山田優(27歳)や加納虹輝(23歳)を団体メンバーに抜擢するなど、着実に強化を図ってきた。

 見延にとってライバルが増えることは個人戦で脅威になる一方で、団体戦の強化を考えれば喜ばしい出来事でもある。だが、見延の見解はそのどちらでもなかった。

「強い選手が増えて、どんどん代表に入ってくるのは“当然のこと”だと思っていました。自分だけ勝っていても練習相手が強くならなければ、強くなれない。むしろ僕よりも山田選手や宇山(賢)選手のほうが才能もあるので、下の若い世代もついてくるのは当然だよね、と思っていました。だから、焦りも喜びもなかったですね」

 チーム最年長でキャプテン。4人の中で最も豊富なキャリアを持つ見延は、男子エペ団体の強さの秘訣をこう教えてくれた。

「4人いれば4通りのやり方がある。誰かが誰かの真似をするのではなく、オリジナルを貫くこと。そのためにアドバイスはしても、ああしろこうしろとは言わなかった」

 ただ、時にぎょっとしたこともある。特にチーム内で最も個性が強い宇山賢(29歳)からは学びしかない、と笑う。

【次ページ】 同部屋になった宇山の驚くべき行動

1 2 3 4 NEXT
見延和靖
西田祥吾
宇山賢
山田優
加納虹輝
東京五輪
オリンピック・パラリンピック

他競技の前後の記事

ページトップ