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【高校野球】偏差値60超の都立校主将と監督が“難病”でもグラウンドに立つワケ 「どこかに渇望があると思うので」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2021/07/03 11:00
都日野台の藤波キャプテン
鹿児島の加治木高校から早大に入学し、野球部の門をたたいた。しかしケガが多く、期間のほとんどがリハビリ組だった。教職を取っていたこともあり、プレーヤーではなく教える側に立とうと志した。
郷里でコーチをした後、東京都の採用試験を受けて合格。最初の赴任校、都荒川商で今は漫才師のみやぞんを指導したエピソードも持つ。
足立新田では秋吉亮を指導した
次に赴任した都足立新田で育成力が実を結ぶ。秋吉亮(現日本ハム)がエースだった時に東東京のベスト4(06年)に入るなど5年連続ベスト8に。定時制へ異動になって現場を離れると"現場に戻してほしい"と有志から嘆願書が寄せられ、海を渡って都大島へ。最初は陸上部の顧問だったものの3年目に投手コーチになってベスト16に導き、2014年センバツ21世紀枠の東京の推薦校になった。
その後、西東京の都南平へ。3年目の夏に早実3年の清宮幸太郎と対決した。
「ホームランを打たれて負けましたが、楽しい試合ができた。いい下級生が残っているので来年こそ、と思っていたら暗転しました」
そんなとき、黄色靭帯骨化症を発症してしまう。
野球選手、特にピッチャーに多い原因不明の難病だ。脊髄の裏の靭帯が骨のように硬化して神経を圧迫する。"70パーセントぐらいは歩けなくなる"と言われたそうだが、奇跡的に手術は成功した。今もしびれが残りスクリューが入っているが、簡単な指導と日常生活には支障がなく、同校では指導4年目になる。
偏差値60超の普通科都立校野球部の現実
2人が在籍する日野台は偏差値60を超える普通科校だ。周辺の国立、立川といった進学校の次のランク、第3グループと言われ、一学年40人学級が8クラスある。
グラウンドはサッカー、ソフト、ハンドなどと共有する。放課後は広く使えないため内野守備練習やグループに分けたバントやゲージの中のバッティング、ウェートトレーニングなど。朝にフリーバッティングを行う。
都立校は野球部員が減っている。
1年生は19人が入ったが、監督は予定していた半分ほどが私立に行ってしまった、と残念がる。コロナの影響で中学生が早々に進路を決めたからだ。