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「日本で野球をやりたい!」ドイツにいた少年はなぜ高校野球に憧れたのか? ドラフト候補の“怪物”と目指す甲子園

posted2021/06/28 17:02

 
「日本で野球をやりたい!」ドイツにいた少年はなぜ高校野球に憧れたのか? ドラフト候補の“怪物”と目指す甲子園<Number Web> photograph by Yu Takagi

阪神ファンの父親の影響で野球を知ったツィマーマン健(岐阜第一・3年)。一塁ベースコーチとして元気いっぱい、チームに貢献している

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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 日本の高校野球に憧れてドイツからやってきた岐阜第一高校のツィマーマン健は、ドラフト候補の怪物・阪口樂ら最高の仲間たちとともに、甲子園出場を目指している。

 出身は兵庫県明石市。ドイツ人の父と日本人の母の間に生まれた。阪神ファンだった父の影響で野球を好きになり、公園での遊びはもっぱら友人たちと野球をすることだった。

 しかし小学3年生の時に父の仕事の関係で、ドイツのハンブルクへ行くことに。野球が盛んではないドイツでは、サッカーやテニスなどをしていたが、中学に入ると同時に再び野球がしたくなったという。

 そんな思いを募らせていたツィマーマンは、やがて中学校の近所に野球施設を見つけた。ハンブルク・ナイツ(Hamburg Knights)というブンデスリーガ2部のチームで、ユースチームもあった。だが、物足りなさを感じていた。

 練習は週に2、3回。試合は1年間で6試合ほどしかなく、チームの中にはルールさえ把握しきれてない選手もおり、すぐにチームの主力になれた。「ピッチャーはストライクが入れば良くて、バッターはバットに当たればいいという感じの楽しんでやっている野球でした」と振り返る。

高校野球の練習を見学して

 大きな転機となったのは中学2年の夏だ。家族旅行で親戚のいる岐阜にやって来たとき、高校野球の練習を見学した。そこでレベルの高さはもちろん、ドイツにはない野球にひたむきに取り組む姿勢がツィマーマン少年の目に魅力的に映った。

「日本で野球がやりたい」

 まだ幼さも残る息子の懇願に両親は驚いたが、その熱意に押された。その年の11月から岐阜の叔母の家の近くの中学校に転校した。

 ドイツ時代とは違い、公立中学校の軟式野球部ではレギュラーになれなかった。それでもやるからには、と強豪校への進学を希望。寮に入って野球に打ち込みたかったこともあって、岐阜第一に進んだ。

 中学の野球部で控えだっただけに、その決断はまたも周囲を驚かせたが、「日本に来た目的は高いレベルで野球をやること」とブレることはなかった。

【次ページ】 “怪物”阪口樂の打球にびっくり

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