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「足を引っ張ってしまって情けない…」 選考会2位で“ノーリアクション”、箱根駅伝3位のシーズン超えを狙う國學院大の今季 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph bySatoshi Wada

posted2021/06/27 11:01

「足を引っ張ってしまって情けない…」 選考会2位で“ノーリアクション”、箱根駅伝3位のシーズン超えを狙う國學院大の今季<Number Web> photograph by Satoshi Wada

全日本大学駅伝関東選考会で第2組を走った主将の木付琳。勝負に出た走りは強いインパクトを残した

藤木「留学生との力の差を感じました」

 “好きなように走れ”――指揮官はそんな言葉でエースを送り出していた。

 第4組には留学生が9人もおり、東京国際大のイェゴン・ヴィンセントを先頭に序盤からハイペースの展開になった。2000mを5分34秒で通過すると、先頭集団は留学生が中心になったが、ただ一人日本人で食らいついたのが藤木だった。

 しかし、「調子は良かった」という藤木だったが、次第に苦しい展開になった。

「2000mから3000mにかけて、1周のラップが急激に上がったりして、そこで対応できなかった。留学生との力の差を感じました。向かい風が強い中で押し切れないと、やっぱり上では戦えないんだって自覚しました」

 結局、ペースダウンした藤木は組16着と、力を発揮しきれなかった。島崎も22着と振るわなかった。そして、ヴィンセントと丹所健が好走した東京国際大に、最終組で2分近い差をひっくり返され、首位通過を明け渡した。

「足を引っ張ってしまって情けない」

 前田監督にとって誤算だったのは、第4組の2人と、第2組を走った主将の木付琳だった。だが、木付もやはり積極的なレースを見せた。

 木付は10000mで28分27秒59の自己記録を持っており、持ちタイムではこの組で飛び抜けていた。

 レースは1000mごとのラップが3分を超えるスローペースの展開になったが、5000m過ぎに木付がペースアップすると、後続を引き離し6000mを前に独走態勢を築いた。5000mから6000mのラップは2分51秒と、一気に15秒近くペースを上げていた。

「スローは予想していたんですけど、5000mで出ようというのは決めていました。そこでしっかり後ろを離して、(3組を走る)後輩に余裕をもたせたいなと思っていました」

 実は、監督とレースプランを話し合った際に、前田は「風もあるし、(飛び出すのは)ぎりぎりまで待て」と提案していた。それでも、木付は自分の意志を突き通した。

 しかし、左脛の故障明けだったこともあり、木付の挑戦は実を結ばなかった。8400mで集団に吸収されると、組16着に終わった。

「うまく噛み合わず、足を引っ張ってしまって情けない」

 木付は悔やむが、チームを鼓舞する熱の入ったチャレンジだった。

「キャプテンとしての心意気が彼の中にあったので、攻めたんでしょうね」

 前田監督も「あそこまでいったら、まとめてほしかった。まだまだ弱い」と言いつつも、木付の姿勢には理解を示していた。藤木や木付のチャレンジングな姿勢は、結果以上のものを、チームにもたらしたのではないだろうか……。
 

【次ページ】 疲労骨折から復帰した中西大翔は独走

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