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日本人は本当に練習しすぎ? 「トレーニングを90分で収める」スペインと「練習は裏切らない」日本の大きすぎる差 

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佐伯夕利子

佐伯夕利子Yuriko Saeki

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posted2021/06/26 11:02

日本人は本当に練習しすぎ? 「トレーニングを90分で収める」スペインと「練習は裏切らない」日本の大きすぎる差<Number Web> photograph by Getty Images

練習時間が減ると、競技力が衰退するという懸念について、スペインと日本の練習の在り方を比較しながら考える(写真はイメージです)

質の高いトレーニングを90分で収めること

 支配されると、長時間練習になりがちです。逆に、子どもと対等であれば、時間の長さや心身への負担、試合への平等な出場機会を考えられるはずです。

 スペインではビジャレアルのみならず、小学生は75分以上は練習しません。試合時間が小学5、6年生で30分ハーフ。全部で60分なので、それ以上の過度なトレーニングをする意味がないのです。これはスペインフットボール協会が決めたわけでもなく、すべての人々が「小学生は75分で当然」と考えています。スタンダードな認識です。

 中学生以上はプロでさえも、90分以上練習することはありません。なぜならば、ゲームが90分だから。要は最も現実に近い状態でトレーニングをすることが、クオリティが高い状態とされています。

 そのような理解のもとに立つと、試合時間である90分間で質を求め、より内容の濃い、クオリティの高いトレーニング内容を90分で収めること。それこそが私たちコーチのチャレンジであり、腕の見せどころということになります。

「練習時間」は「労働時間」と比例しているかも

 加えて、フットボールという競技における人間の集中力が「それ(90分)以上もたない」のも、ひとつの理由です。フィジカル面の負荷という側面で、長時間練習は選手の体を痛めつけることになるのでNG。このことも社会に浸透しています。例えば、週の平日5日間のなかで1日はオフ。週末土曜か日曜が試合なので、そのどちらかはオフになります。

 日本とスペインでは、小中高校生がサッカーに費やす時間はかなり違うようです。日本では小学生でも週5~6日、なかにはチーム活動以外にサッカースクールなどにも通い、1週間休みなしで取り組むケースもあると聞きました。

 サッカーの練習時間と大人の労働時間を比較すると、比例しているかもしれません。スペインは、8時間労働で基本的に残業をしないのが一般的です。

(【はじめから読む】ミスをした小学生がチームメイトに“土下座”… 日本スポーツ界にはびこる欧米ではあり得ない「支配」という光景へ)

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