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高校の成績は“オール5”で慶大進学、レスリング・尾崎野乃香が世界へ 強豪校スカウト「何が何でも尾崎を獲れという指令が…」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySachiko Hotaka

posted2021/06/05 11:02

高校の成績は“オール5”で慶大進学、レスリング・尾崎野乃香が世界へ 強豪校スカウト「何が何でも尾崎を獲れという指令が…」<Number Web> photograph by Sachiko Hotaka

全日本選抜レスリング選手権の女子62kg級で初出場・初優勝を遂げた尾崎野乃香

強豪校スカウト「何が何でも尾崎を獲れと指令が」

 有言実行。その後、国内外ともカデットのカテゴリー(16~17歳)に出場した尾崎は連戦連勝。連勝記録を更新しながら大学生になった。最後の黒星は2018年のインターハイだ。数年前、ある強豪校のスカウトから「何が何でも尾崎を獲れという指令が出ている。尾崎という選手はそんなにいい選手なのか」という問い合わせがあった。その時点で筆者は彼女が究極の文武両道派であることまでは把握していなかったが、パリオリンピックでは女子の顔になることを確信した。

 尾崎がレスリング版・虎の穴JOCエリートアカデミーに入ったのは高1の時だった。同アカデミーでいまも尾崎を指導する吉村祥子コーチは「実際には実家から通う形で中1の時から王子(アカデミーの第2の練習の拠点である安部学院高)で一緒に練習はしていました」と思い返す。「ただ、エリートアカデミーに入るまでは朝練は何もやっていなかったので、スタート時はきつかったと思います。でも本当に一生懸命ついてきてくれ、こっちが求めるものをしっかりとやり切ってくれる。私の目から見ても、順調に成長しているかなと思いますね」と言う。

慶應大へ進学「勉強も頑張りたいと思った」

 優勝を決めた直後、尾崎は自らの意志で慶應大への進学を決めたことを話し始めた。

「レスリングだけではなく、勉強も頑張りたいと思ったので。ただ、勉強も大変で、練習と勉強の日々です。でも、勉強が大変だからレスリングを疎かにするということは絶対にない。勉強を頑張る分、レスリングのこともさらに考えようと思っています」

 大学生になったばかりだと、大学の上級生や社会人と比べると男子も女子もフィジカル面で見劣りするケースがほとんど。しかし尾崎は例外で、出場選手の中では最年少ながらフィジカル面は最も充実しているように映った。果たして初戦となった準決勝では大学生を相手に10−0のテクニカルフォール勝ち。続く決勝では5年前には60kg級で全日本選抜王者になっている坂野結衣(警視庁第六機動隊)を6−0で撃破した。ひとつの失点もない完全優勝。フィジカルで押されたような場面は皆無だったが、吉村コーチは「だからといってすごくウエートトレーニングをやっているわけではない」と打ち明ける。

「力強さとやわらかさを兼ね備えたようなフィジカルにしたくて、そのときの尾崎に必要なトレーニングを継続的にやっている感じ」

【次ページ】 尾崎の1日は練習か勉強かの二者択一

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