「ああ、終わったな、と思いました」

　イソノルーブルの右前脚の蹄鉄が落鉄していたのだ。松永がそれに気づき、装蹄師による蹄鉄の打ち直しが行われた。しかし、イソノルーブルが興奮して暴れ、作業は失敗。結局、イソノルーブルは右前脚の蹄鉄をつけないまま走ることになった。

　イソノルーブルはゲートから本来のダッシュを見せることができなかった。松永が追っつけてようやく2番手につけたが、直線で失速して、5着。勝ったのはシスタートウショウだった。ゴール前は流すようにして2着を2馬身突き放す圧勝だった。

　この敗戦により、イソノルーブルは「裸足のシンデレラ」「裸足の女王」などと呼ばれるようになった。

「あの桜花賞のスタート前は、悔しいという気持ちにすらならなかった。ああ、終わったな、と思いました。ぼくはよほど運に見放されているんだな、と。GIなんて一生勝てないんじゃないかと、情けなくなりました」

　松永はそう振り返った。

オークスで「裸足のシンデレラ」は4番人気

　つづく第52回オークスで1番人気に支持されたのはシスタートウショウだった。松永のイソノルーブルは4番人気の支持にとどまった。

　フルゲートの20頭がスタートした。大外20番枠から出たイソノルーブルが、内に進路を取りながらスタンド前でハナに立った。

「特にハナにはこだわっていませんでした。先に行く馬がいれば行かせようと思っていました」と松永。

　シスタートウショウは後方3番手。

　向正面で、単騎で先頭を行くイソノルーブルから、後方に控えたシスタートウショウまでは20馬身ほどの差があった。馬群が縦長になっているからハイペースなのかと思いきや、1000m通過1分1秒7という、ゆったりとした流れになっていた。松永はこう言う。

「3コーナーを回るとき、『ペースが遅いな』と思いました。自分が後ろにいるときにそう思うことは何度もありましたが、逃げているときに思ったのは、これが初めてのことでした」

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