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【独占取材】エディー・ジョーンズ「勝敗を決める要素の20%は対人関係」ビジネスにも通ずるアプローチとは? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2021/04/23 11:02

【独占取材】エディー・ジョーンズ「勝敗を決める要素の20%は対人関係」ビジネスにも通ずるアプローチとは?<Number Web> photograph by Getty Images

ラグビー界だけにとどまらず、世界のトップコーチからも学びを得ていると語ったエディー・ジョーンズ。コーチングへの探究心は衰えることはない

 この本でも詳細に記されているが、2013年に脳梗塞で倒れてから、エディーさんはより一層、健康管理に気を配っており、負荷の高いトレーニングを自分に課している。

「おそらく、60代はコーチにとって最高の時間になると思っています。様々な知識を得て、対人スキル、そして経済的にも不安が少なくなって、純粋にコーチングを楽しめる年齢に差し掛かりました。NFLではニューイングランド・ペイトリオッツのビル・ベリチックが69歳で素晴らしいコーチング、マネージメントを見せています。私は、これから最高のコーチングを提供できる準備が出来ています」

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今のサントリーは史上最高、注目の選手は?

 日本での滞在中は、いつもサントリーのグラウンドに足を運ぶのがエディーさんの仕事だが、今季のサントリーはオールブラックスの至宝、ボーデン・バレットが加入しただけでなく、各エリアで競争が激しく、かつてないほどの充実を見せているという。

「サントリーを初めてコーチングしたのは1996年のことでした。以来四半世紀にわたってサントリーに関わってきましたが、今季のチームはスピード、スキル、FWの力強さ、チームの一体感、どれをとっても史上最高レベルです。ただし、トップリーグのプレーオフトーナメントはノックアウト方式なので、試合の結果はコインの裏表、どちらが出るか分からないようなものです。それでも、かなりの確率で決勝にまで駒を進めるでしょう」

 エディーさんは、サントリーの若手が日本代表で活躍するだろうと予想している。

「センターの中野将伍ですが、身長186センチ、体重は98キロ。体格、パワー、ゲームの理解度、あれだけの能力を持った日本人のセンターは極めて貴重な人材です。しかも、彼には学ぼうとする姿勢がある。一流選手へと成長するマインドセットを持っていると言えるでしょう。スクラムハーフの齋藤直人も日本らしい速くて巧い9番です。大学のスターは学生時代に注目を集めてきたことで、とかく失敗を恐れる傾向が強いのですが、居心地が良いと感じる場所から抜け出す勇気があれば、成長するチャンスは大いにあるでしょう」

 エディーさんは常に言う。

 人間は居心地のいい場所にいると失敗を過剰に恐れるようになり、その結果として成長する機会を失ってしまう、と。

『エディー・ジョーンズ わが人生とラグビー』は、常に成長を求め、対決や軋轢を辞さずにラグビーの世界を歩んできたエディーさんの長い航海の物語である。

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