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ビエルサが笑った! マンチェスター・シティ戦、なぜ“ジャイアントキリング”を起こせたのか【愛弟子が解説】 

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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posted2021/04/18 06:01

ビエルサが笑った! マンチェスター・シティ戦、なぜ“ジャイアントキリング”を起こせたのか【愛弟子が解説】<Number Web> photograph by Getty Images

ビエルサとグアルディオラという名将対決となったリーズvsマンチェスター・シティ。首位を走るシティが敗れる波乱の結末となった(ビエルサの笑顔の写真は記事中にあります)

 そして91分。フェルナンジーニョのヘディングシュートをGKメスリエがキャッチすると左サイドにスローを送る。左SBアリオスキと左WGコスタはリーズの十八番ともいえるポジショニングによるパスワークを見せ起点を作る。自陣深い位置から走り出したダラスのロングスプリントについてくるシティのMFはおらず、CBストーンズの対応も遅れたことで決勝ゴールが生まれたのだ。ペップも試合後のインタビューで「最後の10分間、私たちは彼らが走るのを止めなければいけなかった」と、リーズに走り負けたことを認めるコメントをした。

サッカーの醍醐味の1つ、ジャイアントキリング

 荒川が試合を振り返る。

「サッカーの醍醐味の1つがジャイアントキリングだと思います。2部リーグからの昇格組で、しかも退場者を出し10人になってしまったリーズが、アディショナルタイムの決勝点で首位チームを撃破してしまうというのは、最高のエンターテイメントだったのではないでしょうか。試合を見て痛感したのが、リーズの選手達がビエルサが求めることを100%信頼し、プレイをやりきっていることです。だからこそ通常起こり得ないことを起こすことが出来た。

 決勝点のアシストを記録したアリオスキの縦パスは、これまで解説してきた典型的な『パシージョ』でした。そしてダラスの2得点も見事でした。マルセロはよく『キーパーの正面にシュートを打つくらいならゴールの四隅を狙って枠外に外れた方がまだマシだ』と、シュートは狙って打つように指導するのですが、1点目の左隅に決めたシュートも、2点目のGKの股間を抜いたシュートも、ダラスが狙いすましてシュートを打っていることが見て取れました。

 リーグ終盤戦となりリーズの選手の成長ぶりや充実ぶりがますます顕著となりました。シティ戦の勝利は、リーズの今後が更に楽しみになるようなベストゲームでした」

「ビエルサの存在は世界サッカーの喜び」

 試合終了のホイッスルが鳴ると、ビエルサとペップは笑顔で抱擁を交わした。ペップは「ビエルサの存在は世界サッカーの喜び」という敬愛の念を公言している。ペップのスッキリとした表情やビエルサの穏やかな笑みからは、激戦を終えてノーサイドとなれる2人の厚い信頼関係が伝わってきた。

 試合後の記者会見でビエルサはこう語った。

【次ページ】 記者会見でビエルサの笑顔を見ることは珍しい

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