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【どうなる東京五輪】なぜ日本はワクチン接種がG7で圧倒的に最下位なのか…このままなら医療従事者もあと1年以上かかる? 

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鳥集徹

鳥集徹Toru Toridamari

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posted2021/04/12 11:00

【どうなる東京五輪】なぜ日本はワクチン接種がG7で圧倒的に最下位なのか…このままなら医療従事者もあと1年以上かかる?<Number Web> photograph by Getty Images

多くの国でワクチン接種が進んでいるが、日本では……(写真はイメージです)

そもそも五輪選手にワクチンは必要か

 拙著、『コロナ自粛の大罪』でも指摘しましたが、大前提として、オリンピック・パラリンピックの選手にワクチン接種が必要かどうか、慎重に考える必要があると思います。第一に、選手たちは10代から30代の若い人たちが多く、新型コロナの重症化リスクがもっとも低い世代です。ただでさえ頑強な肉体の持ち主たちですから、重症化予防の目的でワクチンを接種する必要性は極めて低いと言えるでしょう。そうした人たちに、リスクの高い高齢者を差し置いて優先接種するのは、国民感情としても倫理的にも許されないでしょう。

 もう一つ考慮すべきなのが「副反応」です。短期的な安全性は高いとされていますが、接種者を対象とした厚労省の健康調査によると、ファイザー製のワクチンで2回目接種後に約35.6%が37.5℃以上の「発熱」、67.3%が「倦怠感」、49.0%が「頭痛」を経験しています。これらの反応は接種2日後が最も多く、やがて引いていくとはいえ、毎日の鍛錬が欠かせないアスリートにとっては、数日でも練習をロスするのは避けたいという人が多いのではないでしょうか。

 それでも選手たちに接種する意義があるとしたら、「まわりに感染を広げない」という点が挙げられるでしょう。臨床試験の段階でファイザー製のワクチンの感染予防効果は95%あったとされています。ただし、現実の社会で本当にそれだけの予防効果があるのか、感染の蔓延を抑える効果があるのかどうか、変異ウイルスにも効果があるのかどうか、まだはっきりとはわかっていません。現実社会でのワクチンの効果については、イスラエル、UAE、チリ、英国、米国など、接種が進んでいる国の新型コロナ感染者数(陽性者数)や死亡者数が、今後どう推移するかをしばらく注視する必要があります。

 こうした点を踏まえると、東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたって、「ワクチンに過剰な期待を持たない」ことが賢明かと私は思うのですが、いかがでしょうか。


<参考資料>
・新型コロナワクチンの供給の見通し|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
・チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は:日本経済新聞 (nikkei.com)
・【ワクチン接種】世界の状況は? 日本が遅れた背景はどこに? | 新型コロナ ワクチン(世界) | NHKニュース(nhk.or.jp)
・日本のワクチン接種遅い理由 アストラ責任者に聞く|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト (news.tv-asahi.co.jp)
・アストラ社ワクチン、欧州で高齢者限定の動き…英国では血栓で19人死亡 : 医療・健康 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)
・五輪=米オリンピック委、東京五輪選手団にワクチン接種義務化せず | ロイター (jp.reuters.com)
・厚生労働省「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)『健康観察日誌集計の中間報告(2)』」000759518.pdf (mhlw.go.jp)

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