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東京五輪を逃した34歳の“天才ランナー”佐藤悠基が鈴木健吾の日本記録を「更新可能な記録」と語る理由 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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posted2021/04/07 11:03

東京五輪を逃した34歳の“天才ランナー”佐藤悠基が鈴木健吾の日本記録を「更新可能な記録」と語る理由<Number Web> photograph by AFLO

昨年12月4日の日本選手権10000mで奮闘した佐藤(左)。駒大エースの田澤廉とも競り合った

野球やサッカーは30代後半の選手も少なくないのに

「僕は陸上選手の競技寿命がもっとやれることを証明していきたいんです。野球やサッカーは30代後半や40代でもやられている選手は少なくないですけど、日本の陸上界にはほとんどいません。世界的に見ればいるので、誰かが壁を破れば、その後に続く選手も出てくると思っています」

 実年齢はもう少し上だとささやかれているマラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)は34歳のときに、非公認レースで42.195kmを1時間59分40秒で走破した。2000年代に五輪と世界選手権のトラック種目(5000m、10000m)で8つの金メダルを奪ったケネニサ・ベケレ(エチオピア)も37歳のときにマラソン世界歴代2位の2時間1分41秒をマークしている。バーナード・ラガト(米国)は41歳で出場したリオ五輪5000mで日本記録を上回る13分06秒78で5位に食い込むなど、世界の長距離界はアラフォーの“怪物”たちが存分に強さを見せつけている。

 2010年代前半に国内トラックでは無敵を誇った佐藤は、現在38歳のケネニサ・ベケレに自分の姿を重ねているのかもしれない。そして、東京五輪イヤーとなる今季はターゲットを1つに絞っている。

「トラックでも上を目指したいんですけど、一番の目標はマラソンです。全然成功していないので、とにかく自分のなかで成功したといえるレースをしたい。まだ出場する大会は決めていませんが、そこに焦点を絞ってやっていくのが今季の目標です」

鈴木健吾の日本記録は「うまくいけば更新可能」

 2月28日のびわ湖毎日マラソンでは、鈴木健吾(富士通)が2時間4分56秒の日本記録を樹立。土方英和(Honda)、細谷恭平 (黒崎播磨)、井上大仁(三菱重工)、小椋裕介(ヤクルト)が2時間6分台をマークした。一方、佐藤の自己ベストは2時間8分58秒。トラックや駅伝の走りから考えると明らかに物足りない。元日のニューイヤー駅伝4区では細谷、井上、小椋に完勝しているだけに、本人も自身のマラソンに大きな可能性を感じている。

「びわ湖で日本記録が出ましたけど、今やろうとしていることがうまくいけば更新可能な記録だと思っていますし、2時間4分30秒くらいまでは行けるんじゃないかなと感じています。あとはどこまでマラソン練習ができるのか。その覚悟だけだと思っています」

 佐藤はこれまでマラソンに12回出場しているが、本番に向けてじっくりと準備をしてきたわけではない。様々なことを試しつつ、マラソンに慣れることに重点を置いてきたが、いよいよ“勝負のとき”がやってきたようだ。

【次ページ】 厚底「アルファフライ」で高い到達点へ

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